お知らせ NEWS
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第5回 経営者のための経営分析実践 ~社員一人当たりの「稼ぐ力」を測る生産性分析のキホン~
人手不足や賃上げ要請が強まる中、中小企業にとって「社員一人当たりの生産性」を高めることは、もはや避けては通れない最重要課題です。今回は、会社の真の実力を測る「生産性分析」について、改善・活用の視点も交えながら解説します。 ポイント① 売上ではなく「付加価値」に注目する 生産性を測る際、単なる「売上高」をベースにするのは正確ではありません。注目すべきは「付加価値」です。 付加価値とは、「会社が新たに生み出した価値」のことで、簡便的には売上高から仕入先などの外部に支払った原価(材料費・外注費など)を差し引いた「売上総利益(粗利益)」とほぼ同じものと考えて差し支えありません。会社は、この付加価値を源泉として、社員に給与を払い、家賃を払い、利益を残しています。 改善のポイント:付加価値を高めるアプローチは「販売単価を上げる」か「原価(変動費)を下げる」かの2方向です。単価を上げるには商品・サービスの差別化や高付加価値化が必要であり、原価を下げるには仕入交渉・外注費の見直し・生産効率の改善が有効です。「売上を増やす」だけでは付加価値は必ずしも増えないため、粗利率の改善を意識した経営が重要です。 ポイント② 一人当たりの稼ぐ力を測る「労働生産性」 付加価値を従業員数で割ったものが「労働生産性」です。つまり、従業員1人がどれだけの粗利益を稼ぎ出しているかを表します。 労働生産性 = 付加価値(売上総利益)÷ 従業員数 労働生産性が高ければ高いほど、より利益の出やすい体質と言えます。逆に、社員が自分の給料以上の付加価値を稼ぎ出せていなければ、会社はあっという間に赤字になってしまいます。 改善のポイント:労働生産性を高めるには「付加価値を増やす」か「少ない人数で同じ付加価値を生み出す」かのどちらかです。後者のアプローチでは、業務の標準化・IT化・自動化による効率向上が有効です。また、一人当たり労働生産性を部門別・担当者別に把握することで、どこに改善余地があるかを具体的に特定できます。数字を「チームの成績表」として活用し、改善活動のPDCAを回すきっかけにしてください。 ポイント③ 給与アップと利益確保を両立する「労働分配率」 会社が生み出した付加価値のうち、どれだけを社員の給与(人件費)として分配したかを示すのが「労働分配率」です。 労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値(売上総利益)× 100 人件費を上げれば社員は喜びますが、労働分配率が高くなりすぎると会社の利益を圧迫します。では、どうすればよいのでしょうか?答えは「労働生産性そのものを高めること」です。 労働生産性が向上すれば付加価値が増え、人件費を引き上げながらも会社に利益を残す余裕が生まれます。それがさらに社員のモチベーションを高め、生産性が上がるという「好循環」を生み出すことができるのです。 活用のポイント:労働分配率は業種によって適正水準が大きく異なります。全業種の平均としては「50%強」がひとつの目安ですが、労働集約型であるサービス業は高く(70%程度)、機械化が進みやすい製造業・小売業などは低い(40〜50%台)傾向があります。まずは同業他社の平均値と比較しながら自社の水準を把握し、「賃上げの余力がどこにあるか」を数字で判断できるようになることが、人材確保と経営安定の両立につながります。賃上げを検討する際は、まず自社の労働分配率と労働生産性の現状を確認することをお勧めします。 まとめ 生産性分析によって、自社がどれだけ効率よく付加価値を生み出し、適切に分配できているかが明確になります。「売上を上げる」だけでなく「付加価値を高め、生産性を向上させる」という視点を持つことが、賃上げと利益確保を両立させる経営の鍵です。各指標を定期的に計算し、前期比・同業他社比較を行う習慣をつけることで、経営判断の精度は格段に上がります。 経営分析の総括・分析結果を次の事業計画に活かす方法など、引き続き今後の記事で取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第4回 経営者のための経営分析実践 ~黒字倒産を防ぐ!安全性とキャッシュフロー分析~
どれだけ効率よく利益を出していても、会社が倒産してしまうことがあります。それが「黒字倒産」です。利益が出ているのに手元のお金が尽きて倒産するケースは、決して他人事ではありません。 今回は、黒字倒産を防ぐための「安全性分析」と「キャッシュフロー分析」について、改善・活用の視点も交えながら解説します。 ポイント① 会社の「体力」を測る安全性分析 会社の支払い能力や財務の安定性を測るのが「安全性分析」です。まずは以下の2つの指標をチェックしましょう。 流動比率(短期の安全性) 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 1年以内に現金化できる資産(流動資産)が、1年以内に支払うべき負債(流動負債)をどれだけ上回っているかを示します。この比率が100%を下回っている場合、1年以内に出ていくお金の方が多いため、資金ショートを起こす危険性が高いと言えます。一般的に日本の企業の平均は120%程度ですが、理想としては150%以上あれば短期的な資金繰りは極めて安全とされています。まずは120%を最低ラインとして死守することを目指しましょう。 改善のポイント:流動比率を高めるには、流動資産を増やすか流動負債を減らすかの2方向があります。具体的には、売掛金の回収サイトの短縮・在庫の圧縮・短期借入金の長期借入への切り替えなどが有効です。特に「短期借入を長期借入に借り換える」ことで、流動負債が固定負債に移り、流動比率が改善します。資金繰りに余裕がない時期こそ、早めに金融機関と相談することをお勧めします。 自己資本比率(長期の安全性) 純資産 ÷ 総資産 × 100 会社の全財産のうち、返済不要の自己資本がどれくらいあるかを示します。借入金への依存度が低いほど、不況や金利上昇への抵抗力が強く、倒産しにくい安定した会社と評価されます。一般的に30〜40%以上が健全の目安とされています。 改善のポイント:自己資本比率を高める最も確実な方法は、利益を出して内部留保を積み上げることです。短期的には利益を社外に流出させない(過度な役員報酬・配当の抑制)こと、中長期的には収益性を改善して毎期の利益を積み重ねることが基本です。借入金の返済を進めることも総資産の圧縮につながり、比率の改善に寄与します。 ポイント② 営業キャッシュフローは「プラス」が絶対条件 利益と手元の現金は別物です。利益が出ていても、売掛金の回収が遅れたり、過剰な在庫を抱えたりすればお金は減っていきます。さらに、そこから毎月の「借入金の返済」を行わなければなりません。 そこで重要になるのが「キャッシュフロー(CF)計算書」です。中でも最も重要なのが、本業の営業活動による現金の動きを示す「営業キャッシュフロー」です。会社を続けていくためには、「営業CFがプラスであること」、そして「営業CFの範囲内で借入金の返済を賄えること」が絶対条件となります。借入金の返済は財務CFに分類されますが、その返済原資を本業で稼ぎ出せているかどうかが、会社の存続を左右します。 改善のポイント:営業CFがマイナスまたは利益に対して著しく小さい場合、主な原因は①売掛金の増加(回収遅れ)、②在庫の増加(売れ残り)、③仕入債務の減少(支払いサイトの短縮)のいずれかです。まずPLの利益とCFのズレの原因を特定し、売掛金回収サイトの短縮交渉・在庫管理の見直しなど、具体的なアクションにつなげましょう。 ポイント③ 3つのCFの組み合わせで会社のステージがわかる 営業CFがプラスであることを大前提として、将来への投資(投資CF)や借入・返済(財務CF)のバランスを見ることで、会社が今どのようなステージにいるかがわかります。 営業CF 投資CF 財務CF 会社のステージ・状態 プラス マイナス マイナス 本業で稼ぎ、投資・返済も賄える優等生タイプ プラス マイナス プラス 積極投資のため、本業の稼ぎに加えて借入も増やしている成長期タイプ マイナス プラス マイナス 本業不振で銀行からも借りられず、資産を切り売りして借入返済に充てている危険水域タイプ 活用のポイント:自社のCFパターンを把握することで、経営の現状認識と次の打ち手が明確になります。「優等生タイプ」であれば積極的な設備投資や借入返済の加速を検討できます。「成長期タイプ」であれば、投資の回収計画と返済能力のバランスを慎重に管理する必要があります。「危険水域タイプ」は倒産一歩手前の危険な状態です。本業の収益改善を最優先課題として取り組むとともに、早急に専門家へ相談することをお勧めします。CFパターンの変化を毎期追うことで、会社の体質の変化をいち早く察知できます。 まとめ 利益を追う「収益性」は車のアクセル、手元資金を守る「安全性・CF」は車のブレーキです。両方を正しく管理することが、会社を長く存続させる秘訣です。流動比率・自己資本比率・営業キャッシュフローの3つを定期的にチェックし、異常値が出たら早めに手を打つ習慣を持ちましょう。 生産性分析・経営分析の総括など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第3回 経営者のための経営分析実践 ~会社の「稼ぐ力」を正しく測る収益性分析のポイント~
今回からは、決算書の数字を使って自社の健康状態をチェックする「経営分析」の実践に入ります。最初のテーマは、会社がどれだけ効率よく儲けているかを測る「収益性分析」です。 ポイント① 利益の「額」ではなく「率」に注目する——売上高営業利益率 「今期は1,000万円の利益が出た!」と喜んでいても、売上が1億円の会社と売上が5,000万円の会社では、その意味合いが全く異なります。会社の稼ぐ力を正しく比較するためには、利益の「額」ではなく「率」を見ることが重要です。 その代表が「売上高営業利益率」です。売上高に占める営業利益の割合を示すもので、この数字が高いほど、本業で効率よく稼ぎ出す組織や仕組みができている(組織力が高い)と評価できます。 売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100 改善・活用のポイント 売上高営業利益率が低い場合、原因は大きく2つです。「粗利率が低い(売上総利益率の問題)」か、「販売費・一般管理費が多すぎる(コスト構造の問題)」かのどちらかです。まずPLを段階的に確認し、どの段階で利益が削られているかを特定することが改善の第一歩になります。前期比や同業他社との比較で、異常値がないかを定期的にチェックする習慣をつけましょう。 ポイント② 会社のすべての財産をどう活かしたか——ROA 売上に対する利益率だけでなく、「会社が持っているすべての財産(総資産)をどれだけ上手に使って利益を出したか」を測ることも重要です。これを「ROA(総資産利益率)」と呼びます。 ROA = 経常利益 ÷ 総資産 × 100 いくら利益が出ていても、無駄な在庫や使っていない設備(遊休資産)などの「稼がない資産」を大量に抱え込んでいると、このROAは低くなります。ROAが高い会社は、手持ちの資産をムダなくフル活用して利益を生み出している筋肉質な会社と言えます。 改善・活用のポイント ROAを改善するアプローチは「分子(利益)を増やす」か「分母(総資産)を減らす」かの2方向です。利益を増やすには収益性の改善、総資産を減らすには不要な資産の処分・売掛金の早期回収・過剰在庫の削減などで現金を生み出し、それを借入金の返済(圧縮)に充てることが有効です。資産を現金化しただけでは「資産が姿を変えるだけ」で総資産の総額は変わりません。現金化したお金で借入金を返済することで、資産と負債が両方減り、初めて総資産が減少してROAが向上します。長年使っていない設備や回収の見込みが薄い売掛金が眠っていないかBSを点検し、「会社を身軽にする(総資産を減らす)」ことを意識してみてください。 ポイント③ 自分が投じたお金がどう増えたか——ROE もう一つ、世の中で最もポピュラーな経営指標に「ROE(自己資本利益率)」があります。返済不要の自己資本(社長や株主が出したお金と過去の利益の蓄積)を使って、どれだけ効率よく利益を稼ぎ出したかを示す指標です。 ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 ROEが低い会社は、資産の使い方や利益の生み出し方について、経営のやり方そのものを見直す必要があるかもしれません。一方で、ROEは借入を増やすことで数値上は上昇しますが、それは財務リスクの増大を意味します。「利益を増やしてROEを高める」という健全な方向性を意識することが重要です。 改善・活用のポイント 中小企業においてROEを高める最も現実的な方法は、利益率の改善と内部留保の有効活用です。稼いだ利益をただ積み上げるのではなく、収益を生む投資(設備・人材・IT化など)に積極的に回すことで、自己資本の生産性が高まります。また、ROEは毎期の利益率と自己資本の推移を合わせて見ることで、経営の健全性をより立体的に把握できます。 まとめ 収益性分析の3つの指標——売上高営業利益率・ROA・ROE——はそれぞれ異なる角度から「稼ぐ力」を照らし出します。数字を計算して終わりにするのではなく、「なぜその数字になっているのか」「どう改善するか」まで考えることが経営分析の本来の目的です。まずは自社の数字を算出し、前期比と合わせて変化の傾向を確認してみてください。 安全性分析・キャッシュフロー分析・生産性分析など、引き続き実践的な経営分析の手法を今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第2回 経営者のための決算書入門 ~財務3表(PL・BS・CF)の3つのつながり~
決算書を見ると数字がびっしり並んでいて「頭が痛くなる……」という方も多いかもしれません。しかし、ポイントを押さえればとてもシンプルです。 今回は、経営分析の土台となる「決算書」の基本構造について解説します。 ポイント① まずは「財務3表」それぞれの役割を知ろう 会社がつくる決算書には、おもに3つの種類が存在します。それが「損益計算書(P/L)」「貸借対照表(B/S)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」で、これらを総称して「財務3表」と呼びます。それぞれの役割を一言で表すと以下のようになります。 損益計算書(PL) 会社の「業績(成績表)」がわかります。1年間でいくら売上をあげ、いくら経費を使い、最終的にいくら利益(または損失)が出たかを表します。 貸借対照表(BS) 会社の「財政状態(体力)」がわかります。決算日の時点で、会社にどんな資産(現金や設備)があり、どんな負債(借金)があり、純資産(自己資本)がいくらあるかを表します。 キャッシュフロー計算書(CF) 会社の「お金(現金)の動き」がわかります。1年間でどのような理由でお金が入ってきて、どのように出ていったのか、手元の現金がどう増減したかを表します。 ポイント② 決算書が読めない最大の原因は「バラバラに見る」から 多くの人が決算書に挫折してしまうのは、この3つの表を「それぞれ独立したもの」としてバラバラに丸暗記しようとするからです。実は、財務3表はそれぞれが別々に存在しているのではなく、パズルのピースのように密接に関連し合って1つの全体像を表しています。 特に重要な「3つのつながり」を押さえておきましょう。 つながり① PLの「利益」は、BSの「純資産」に蓄積される 損益計算書(PL)で計算された最終的な「当期純利益」は、貸借対照表(BS)の純資産の部にある「利益剰余金」という項目につながっています。毎年利益を出し続ければBSの純資産が分厚くなり(会社の体力がつき)、赤字を出せば純資産が削られていく(体力が落ちる)というつながりです。 つながり② CFの「本業のお金の動き」は、PLの「利益」とつながっている キャッシュフロー計算書のうち、本業のお金の動きを表す部分(営業キャッシュフロー)は、損益計算書(PL)の「税引前当期純利益」をスタート地点として計算するのが一般的です。PLで計算された利益に対して、減価償却費など「実際には現金が動いていない費用」を足し戻すなどの調整を行うことで、実際の現金の動きを導き出しています。利益と手元のお金はここでしっかりリンクしているのです。 つながり③ CFの「現金の残高」は、BSの「現金」と一致する キャッシュフロー計算書の最後で計算される「現金残高(期末残高)」は、貸借対照表(BS)の資産の部にある「現金及び預金」の金額とピタリと一致します。 ポイント③ お金は姿を変えてグルグル回っている このつながりを理解すると、会社のお金がどう回っているかが立体的に見えてきます。すべての企業は、「お金を集める → 投資する(使う) → 利益をあげる」という3つの活動を行っています。 銀行や出資者からお金を集め、それを事業のための設備や商品に変え、その資産を使って売上と利益を生み出し、それが手元の現金となり、再び会社の財産として蓄積される——財務3表は、この企業活動のサイクルを3つの異なる角度から数字で可視化したものに過ぎないのです。 まとめ 決算書は、単なる数字の羅列ではなく「会社のお金がどう姿を変えて、今どこにあるのか」を教えてくれるストーリーです。財務3表を「一体」として俯瞰できるようになれば、数字への苦手意識は大きく減るはずです。 収益性分析・キャッシュフロー分析など、財務3表を使った実践的な経営分析の手法を今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第1回 経営者のための決算書入門 ~なぜ経営者は決算書を読み、経営分析をすべきなのか?~
事業計画書に関する前の連載記事では、融資を引き出し会社を成長させるための「未来の数字(計画)」の作り方を解説しました。その中で、融資審査では「社長自身が会計(数字)を理解しているか」が厳しく見られるというリアルな裏側もお伝えしました。 計画という「羅針盤」を手に入れて航海へ漕ぎ出した今、次に経営者に求められるのは、過去から現在までの航海の結果を数字で確認し、自社の状態を正しく把握するスキルです。事業計画が「未来の地図」だとすれば、決算書と経営分析は「現在地を確認するGPS」と言えます。 今回から始まる連載では、経営者のための「決算書の読み方」と「経営分析の実践」について解説していきます。 ポイント① 利益を出すことは「ゴール」ではなく「前提」 「うちは毎期しっかり利益を出しているから大丈夫」と安心していませんか?もちろん、利益を獲得することは会社が存続するための大前提です。しかし、経営において「利益が出ていること」と「会社が安全であること」は必ずしもイコールではありません。 帳簿上は利益が出ていても、手元にお金が残っていなければ、ちょっとした環境の変化で資金繰りが滞り、会社は倒産してしまうリスクがあります。これがいわゆる「黒字倒産」です。売上代金の回収が遅れたり、仕入代金の支払いが先行したりすると、損益計算書では黒字なのに手元の現金が底をつく——こうした事態は、特に急成長中の会社や、取引先への入金サイトが長い業種で起こりやすいリスクです。 売上や利益といった表面的な数字だけを見て満足するのではなく、その数字の裏側にある「本当の稼ぐ力」や「お金の流れ」までを読み解く力が必要なのです。 ポイント② 経営分析は会社の「健康診断」である 決算書は、いわば会社の「健康状態を表すカルテ」です。そして、その数値を客観的に読み解く経営分析は、会社の「健康診断」そのものと言えます。 人間も、見た目は元気そうでも、血液検査をすると隠れた病気が見つかることがあります。会社も全く同じで、「なんとなく儲かっている気がする」「手元に現金があるから大丈夫だろう」といった感覚的な経営を続けていると、水面下で進行している資金繰りの悪化や資産の目減りといった「倒産の危険性」に気づくのが遅れてしまいます。 経営分析を行う最大の目的は、会社の隠れたリスクを早期に発見し、致命傷になる前に適切な対策を打つことにあります。年に1回の決算時だけでなく、定期的に自社の数字と向き合う習慣を持つことが重要です。 ポイント③ 社長自身が数字を読めるようになる最大のメリット では、なぜ経理担当者や税理士に任せきりにするのではなく、経営者自身が決算書を読み、分析できなければならないのでしょうか。理由は大きく2つあります。 理由① 金融機関からの信頼に直結する 小規模な会社では、日々の財務管理を税理士に委ねているケースも多いですが、外部の人間が会社の実態を完全に把握するにはどうしても限界があります。そのため、金融機関は社長自身が自社の財務を理解していることを極めて重要視しています。社長が自分の言葉で自社の財務状況を客観的に語り、課題に対する改善策を示せることは、銀行からの「信用」に直結します。 理由② 次の事業計画の精度が格段に上がる 自社の現状を正しく分析できれば、「次はどこに投資すべきか」「どこを削るべきか」という未来の意思決定の精度が格段に上がります。事業計画書の連載記事でお伝えした「PDCAサイクル」を思い出してください。計画(Plan)を立て、実行(Do)し、決算書で検証(Check)し、次の計画を改善(Action)する——経営分析は、このサイクルの「C(検証)」を担う、なくてはならない工程です。 まとめ 経営分析は、過去の成績を振り返るためのものではありません。倒産リスクを未然に防ぎ、未来の正しい経営判断を下すための不可欠なプロセスです。事業計画という「未来の羅針盤」と、経営分析という「現在地を確認するGPS」の両方を持つことで、会社はより確かな方向へと進んでいけます。 財務3表の読み方・収益性分析・安全性分析など、実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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最終回 事業計画書を「育てる」経営者になろう ~シリーズ総括~
これまでのシリーズでは、事業計画書の意義や作り方から、金融機関の審査ポイント、そして日々のPDCA活用法までを解説してきました。 総括となる今回は、完成した事業計画書を経営という航海の「羅針盤」としてさらに育てていく方法と、事業計画書に向き合い続ける経営者の成長についてお伝えします。 ポイント① 計画は「変えていく」もの。羅針盤を育て続けよう 事業計画書を長期的に使い続ける上で最も重要なマインドは、「事業計画は変えていくもの(可変性)」という大前提を持つことです。 「一度作った立派な計画だから」と固執する必要はありません。ビジネス環境は目まぐるしく変化します。現実とのギャップが生じたり、新たな制約の壁にぶつかったりしたなら、何度でもシミュレーションを繰り返し、柔軟に計画を修正・再構築していくのが本物の経営力です。 羅針盤は、環境の変化に合わせてアップデートし「育てる」ことで、常に正しい方角を示してくれるようになります。 ポイント② 「見える化」で社員を巻き込む最強の武器にする せっかく完成した事業計画書も、社長の頭の中やパソコンの中にしまわれていては効果を十分に発揮できません。事業計画書を使い倒すためのもう一つのポイントは、社内への「見える化」です。 経営理念や将来のビジョン、数値目標を全社員に共有し、会社の向かうべき方向性をわかりやすく示しましょう。経営計画を見える化し、社員の持ち場に応じた行動目標にまで落とし込むことができれば、事業計画書は社員のモチベーションを高め、組織のベクトルを合わせるための強力なコミュニケーションツールに変わります。 ポイント③ 事業計画書を作れる経営者は何が違うのか? 最後に、「事業計画書を作れる経営者」と「作れない経営者」は何が違うのかを考えてみましょう。 それは、「不確実な明日に向き合う覚悟」を持っているかどうかです。事業計画は、単に達成するためのノルマをまとめたものではなく、見えない未来の困難に立ち向かうために作るものです。 社長自身の熱意やビジョンという「命を吹き込む」ことで、事業計画書は単なる紙の書類から、金融機関や社員からの信頼を勝ち取る「生きた経営ツール」へと昇華します。作ることがゴールではなく、作り続け、育て続けることこそが、経営者としての成長そのものです。 まとめ 第1回でお伝えした通り、事業計画書は単なる「提出書類」ではなく、「経営の羅針盤」です。計画を立て、実行し、検証し、そして柔軟に見直していく——このサイクルを回し続けることで、羅針盤は精度を増し、会社はより確かな方向へと進んでいきます。 当事務所では、事業計画書の作成支援から、その後の見直しや資金繰りのご相談まで、経営者の皆様の成長に寄り添う伴走支援を行っております。「何から手をつければいいかわからない」「自分の計画に専門家の意見が欲しい」という方は、お気軽にご相談ください。 ※本記事は掲載時点の法令・税制に基づいて作成しています。 その後の税制改正等により、記載内容が現状と異なる場合があります。 個別の税務判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。 【参考文献】本連載の執筆にあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。 ・『51の質問に答えるだけですぐできる「事業計画書」のつくり方』(原尚美 著/日本実業出版社) ・『決定版 7日で作る事業計画書』(赤羽雄二 著/明日香出版社) ・『図解でわかる経営計画の基本 いちばん最初に読む本』(神谷俊彦 編著/アニモ出版) ・『融資を引き出す創業計画書 つくり方・活かし方』(西内孝文 監修/あさ出版)
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第8回 事業計画書をPDCAで活用する方法 ~「作って終わり」にしないための実践ガイド~
融資が下りて一安心し、苦労して作った事業計画書を机の奥にしまってしまう……。実は、これが最も多い失敗パターンです。 事業計画書の本当の価値は、作ることではなく「実行し、検証・改善(PDCA)して使い倒すこと」にあります。今回は、事業計画書を生きた経営ツールとして継続活用する方法について解説します。 ポイント① ただ「順番に回すだけ」の平面的なPDCAになっていませんか? 「PDCAを回している」という会社でも、毎月、売上と利益の結果だけを確認し、「今月は未達だったね」「来月は頑張ろう」といった世間話で終わってしまっているケースがよくあります。 これは、各プロセスが自己目的化してしまい、「PとDとCとAをただ順番に進めているだけ」の平面的な作業になっているからです。真のPDCAは、実行と検証を経て、よりよい計画へと軌道修正していく「立体的」なサイクルでなければなりません。 ポイント② 「売上目標=計画」ではない!行動プロセスを定義する PDCAがうまく回らない最大の原因は、最初の計画の間違いにあります。「売上高〇〇万円とする」ことを計画だと思い込んでいる方がいますが、これは最終的な目標数値(KGI:重要目標達成指標)であって、計画ではありません。 真の計画とは、「その目標を達成するために、どんな行動を、どれくらい実行するか」という行動指標(KPI:重要業績評価指標)を具体的に定めることです。精神論を排除し、「提案件数」や「新規訪問数」といった行動目標をセットで計画することが重要です。 ポイント③ 月1回の「進捗会議」で、結果と行動をセットで検証する 計画を実行した後は、月1回の「進捗会議」を定例化し、予実管理を行いましょう。このとき、売上の結果(KGI)だけでなく、行動プロセス(KPI)もセットで検証することが極めて重要です。 「行動目標は達成したのに売上が未達」なのか、「行動目標すら未達だから売上が上がらない」のか——この組み合わせを検証することで、初めて具体的な改善策が見えてきます。 社内だけの会議だと「今月は忙しかったから」と甘えが出やすいため、税理士などの専門家を交えて第三者の目を入れることも、PDCAを確実に回していく上でのひとつの有効な方法です。 まとめ 事業計画書は、実行と検証を繰り返すことで初めて、会社を成長させる強力な武器になります。KGI(結果)とKPI(行動)を分けて検証し、立体的なPDCAを回し続けることが、計画を「絵に描いた餅」で終わらせないための鍵です。 当事務所では、事業計画書の作成だけでなく、その後の毎月の進捗管理や進捗会議のサポートも行い、社長と伴走しながら目標達成をご支援しています。計画の実行にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。 次回は、本シリーズの総括として、完成した事業計画書を「経営の羅針盤」としてさらに育てていく方法と、事業計画書に向き合い続ける経営者の成長についてお伝えします。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第7回 事業計画書の書き分け方 ~融資用と補助金申請用で異なる評価ポイント~
「銀行の担当者に褒められた事業計画書を出したのに、補助金の審査には落ちてしまった……」こうした経験をお持ちの経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 「同じ事業計画書なのになぜ?」と疑問に思うかもしれませんが、実は「融資」と「補助金」では、審査で評価されるポイントが全く異なります。今回は、同じ事業計画でも結果が変わってしまう理由と、それぞれの書き分けのツボを解説します。 ポイント① 「保守的」を好む融資、「革新的」を好む補助金 これが最も大きな違いです。 融資の目線(保守的) 金融機関は「貸したお金が確実に返ってくるか」を最重要視します。そのため、夢を語るポジティブな計画よりも、最悪の事態を想定した、ネガティブで保守的な計画を好みます。 補助金の目線(革新的) 補助金は国や自治体の税金が原資であり、経済の活性化や波及効果が目的です。そのため、現状維持ではなく、新市場への参入や革新的なサービスの開発といった「思い切った挑戦や成長性」が評価されます。 ポイント② 融資は「対話」、補助金は「書面の完成度」が勝負 審査のプロセスにも大きな違いがあります。 融資のプロセス 銀行員との面談があるため、もし書類の記載が不足していても、社長自身の言葉や熱意で補足説明してカバーする余地があります。 補助金のプロセス 補助金の審査は制度によって異なりますが、基本的には外部有識者による書面審査が中心です。融資のように面談で不足を補う機会は限られるため、申請書の完成度がそのまま審査結果に直結します。公募要領に明示されている審査基準のキーワードを漏れなく盛り込み、図や表を使って視覚的にわかりやすく伝えることが重要です。 ポイント③ 重視される「数字」が全く違う 融資が重視する数字 これまで解説してきた通り、銀行が最も見たいのは、利益と減価償却費からなる「返済財源(簡易キャッシュフロー)」です。貸したお金が確実に返ってくるかどうかを、この数字で判断します。 補助金が重視する数字 補助金では返済の有無よりも、制度ごとに決められた「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年率〇%以上の向上」といった特定の要件をクリアしているかどうかが絶対条件になります。 まとめ 融資と補助金は、どちらも「誰に・何を・どうやって提供するか」というビジネスの骨格は同じですが、提出先に合わせて「手堅く(融資用)」か「強気に・加点項目を意識して(補助金用)」チューニングを変える必要があります。 当事務所は、金融機関からの融資を引き出すための、手堅く現実的な事業計画書の作成と資金繰りサポートに特化しています。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。 事業計画書の各論について、今後の記事でも順次取り上げていく予定でおります。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第6回 事業計画書と融資審査の関係 ~金融機関が実際に見ているポイントを解説~
苦労して作成した事業計画書を、金融機関はどのような基準で「採点」しているのでしょうか? 融資審査の裏側や、銀行員が実際にチェックしているポイントを知ることで、事業計画書は単なる「提出書類」から、融資を引き出す「強力なツール」へと変わります。今回は、審査の現場目線で「ここを押さえれば通りやすくなる」という実践的なポイントを解説します。 ポイント① 銀行員が必ずチェックする「審査の3大原則」 金融機関の融資審査において、案件の中身を問わず必ずチェックされる基本的なポイントがあります。それが以下の3つです。 1. 資金使途(何に使うのか) 必要な資金が、設備資金なのか運転資金なのかという使い道です。ここが不明確な融資には応じてもらえません。 2. 返済財源(どうやって返すのか) 貸したお金を何から返すのかという根拠です。銀行は損益計算書上の「利益」ではなく、手元に残る現金である「簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)」を返済財源として見ています。 3. 保全(万が一の時はどうするか) 計画通りにいかず返済できなくなったときに備え、担保や保証人などの回収手段(保全)が確保されているかを確認します。 これら3つは、個人間でお金の貸し借りをする際にも確認する当たり前のことですが、金融機関の審査でも同様に最も重視される大原則です。 ポイント② 融資の合否を分ける「債務償還年数」 事業計画書の数値から、銀行員が「この会社は借り過ぎではないか」を測る最大のモノサシがあります。それが「債務償還年数」です。 債務償還年数とは、「現在の借入金を何年で返済できそうか」を表す指標で、以下の算式で計算されます。 債務償還年数 = 借入金残高 ÷ 簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費) 一般的に、銀行の基準では「この債務償還年数が10年以内であること」が正常な会社の目安(10年ルール)とされています。もし10年を超えている場合は「すでに借り過ぎている」と判断され、新たな融資を受けるのは非常に難しくなります。 利益計画から導き出されるキャッシュフローが、この「10年ルール」をクリアできる水準になっているか、提出前にぜひご自身で電卓を叩いてセルフチェックしてみましょう。 ポイント③ 立派な計画書でも落ちる?「経営者の会計理解度」 「数字も整っているのに、なぜか審査に落ちてしまった……」というケースがあります。実は、銀行は書類や数字だけでなく、面談などを通じて「経営者の人物評価」も厳しく行っています。 その中で大きなマイナス評価になってしまうのが、「社長自身が会計(数字)を理解していないこと」です。どれほど丁寧に作り込まれた事業計画書が提出されても、銀行からの「なぜこの売上予測になるのですか?」「資金繰りはどうなっていますか?」という質問に対し、社長が自分の言葉で的確に答えられなければ、「外部の専門家に丸投げして作っただけだ」と見抜かれてしまいます。 社長自身が自社の財務を理解し、数字の根拠を自分の言葉で語れることが、銀行からの「信頼」に直結するのです。 まとめ 金融機関は、「資金使途・返済財源・保全」の3大原則をベースに、「債務償還年数(10年ルール)」で安全性を測り、最後に「経営者自身の会計への理解度」を見ています。これらを意識して事業計画書をブラッシュアップし、自信を持って面談に臨めるよう準備しましょう。 自社の債務償還年数の計算や、銀行員が納得する「根拠のある数字」の作り方に不安がある方は、お気軽に当事務所へご相談ください。社長ご自身の言葉で語れる事業計画づくりを、税理士の視点からサポートいたします。 事業計画書の各論について、今後の記事でも順次取り上げていく予定でおります。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第5回 事業計画書の数値計画とは? ~説得力のある収支計画・資金計画の作り方~
事業計画書の中で、多くの経営者が最も頭を悩ませるのが「数値計画(収支計画・資金計画)」です。 「エクセルが苦手」「計算が合わない」と抵抗を持つ方も多いですが、難しく考える必要はありません。数値計画とは、これまで考えてきたビジネスのコンセプトや実行計画を、「数字」という共通言語に翻訳する作業です。 今回は、税理士の視点から、金融機関を納得させる「根拠のある数字」の作り方を解説します。 ポイント① 売上予測は「希望」ではなく「根拠の積み上げ」 売上予測を立てる際、「右肩上がりでこれくらい売れたい」という単なる希望や根拠のない努力目標を書いても、金融機関からの信頼は得られません。 説得力を持たせるには、売上を「客数 × 客単価 × 購入頻度」といった要素に分解し、それぞれについて客観的なデータに基づいた予測値を設定して、計算根拠を明記することが大切です。 さらに信憑性を高めるテクニックとして、売上計画には「標準」「楽観」「悲観」の3つのシナリオを想定しておくことをお勧めします。特に、想定外の逆風に見舞われた場合の「悲観シナリオ」を用意し、最悪の事態でもコスト削減などで資金繰りを回す対策を明記しておくと、金融機関からの評価は格段に上がります。 ポイント② コスト計画と「逆算」のテクニック 費用を計算する際は、ひとまとめにするのではなく、売上の増減に伴って変わる「変動費(仕入原価など)」と、売上に関係なく毎月一定額発生する「固定費(家賃・人件費など)」に分けて整理するのが基本です。 ここで実務的なアプローチをご紹介します。それは、売上から利益を計算するだけでなく、「下から逆算してつくる」方法です。会社を維持するためには、毎月の固定費や借入金の返済を賄い、将来のための手元利益(内部留保)を残す必要があります。そこから逆算して「最低限達成しなければならない売上高(必要売上高)」を割り出し、その目標が現実的に達成可能かを検証するのです。 ポイント③ なぜ「利益」が出ても会社は潰れるのか? 損益計算書上では利益が出て黒字なのに、手元にお金がなくなり倒産してしまう——いわゆる「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。 この原因は、会計上の「発生主義(売上が立った日)」と、実際の「現金主義(入金された日)」の間に生じるタイムラグにあります。売上が上がっても実際の入金が翌月末・翌々月末になることはよくあります。売上代金の回収よりも仕入代金などの支払いが先行すると、計算上は利益が出ているのにお金が足りないという事態に陥ります。 金融機関が最も見たいのは「貸したお金がいつ、どうやって返ってくるのか」です。だからこそ、利益だけでなく、お金の出入りを月別に追う「資金繰り表」を作成し、現金の動き(キャッシュフロー)を示すことが事業計画書のキモになります。 まとめ 数値計画は、あなたのビジネスの「熱意」を「信用」に変える強力なツールです。売上の根拠を積み上げ、逆算で必要売上高を確認し、資金繰り表でキャッシュの動きを示す——この3つを押さえるだけで、計画書の説得力は大きく変わります。 ただし、利益と現金のズレの把握や、現実的な逆算計画の作成には、専門的な知識が求められる部分もあります。「数字の作り方に自信がない」「資金繰りに不安がある」という方は、お気軽に当事務所へご相談ください。根拠のある事業計画書づくりを一緒にサポートいたします。 事業計画書の各論について、今後の記事でも順次取り上げていく予定でおります。引き続きご覧いただけますと幸いです
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第4回 事業計画書に書く市場分析・競合分析とは? ~中小企業・創業者向けの現実的な書き方~
事業計画書の中で、「市場分析」や「競合分析」のページにさしかかると、急に筆が止まってしまう方は少なくありません。 「官公庁の難しい統計データをたくさん並べなきゃいけないの?」「正確な市場規模なんてわからない…」と難しく構えていませんか? 実は、金融機関の担当者や投資家は、中小企業やスタートアップに対して、シンクタンクが作るような壮大なマクロ分析や、1円単位の正確な未来予測など最初から求めていません。今回は、背伸びしすぎない「身の丈に合った現実的な分析」で、読み手をしっかり納得させる書き方のコツを解説します。 市場分析の書き方:「正確な予測」より「確かな肌感覚」 市場分析の目的は、「このビジネスには十分に儲かるチャンス(市場の大きさ)がある」ということを客観的に示すことです。 コツ① 壮大な「マクロ」より、足元の「ミクロ」で語る 「日本全体の〇〇市場は数兆円規模で…」といった大きなデータも背景としては役立ちますが、それだけではあなたの会社の売上にどう直結するのかが見えません。 中小企業や店舗ビジネスにとってより重要なのは、「自社が出店・展開する近傍マーケット(ミクロ市場)」です。たとえば、「出店予定地から半径〇kmの商圏人口」「最寄り駅の乗降客数」「周辺のファミリー層の割合」といった、身近で具体的なデータを示す方が、ずっと現実的な説得力が増します。 コツ② 「これくらいの人が、いくら使いそうか」を計算する 市場規模を難しく考える必要はありません。「ターゲットとなる顧客は自分の商圏に何人(何社)いるか」「その人たちは、その悩みを解決するために現在年間いくらくらいお金を使っているか」——この2つを掛け合わせるだけで、大まかな仮説が立てられます。 正確な数字がわからなくても構いません。「大胆に前提条件を置いて推定する」ことが大切です。ビジネスセンスのある「肌感覚の数字」が示せれば、まずは合格点です。 コツ③ 「なぜ今なのか?」を水面下の不満で示す どんなに成熟した市場に見えても、ビジネスチャンスは必ずあります。「なぜ今この事業をやるのか?」を裏付けるには、水面下で高まっている「顧客の不満」や「構造変化」を指摘するのが有効です。 「既存のサービスに不満を持っている層が〇〇人いる」「法改正により、〇〇という新たなニーズが急増している」といった変化のエネルギーを伝えることで、「だから今がチャンスなのだ」という強いメッセージになります。 競合分析の書き方:素人が見て「勝てる!」と思わせる 競合分析の目的は、「強敵がいる中で、どうやって自社が選ばれるのか」を証明することです。 コツ④ 「間接競合(代替品)」を忘れない ライバルを挙げる際、同じ商品・サービスを扱う「直接競合」だけでなく、顧客の同じニーズを満たす別の手段である「間接競合(代替品)」も必ず考慮してください。 たとえば、新しい宅食サービスを立ち上げる場合、競合は他の宅食業者だけでなく、「近所のスーパーやコンビニの惣菜」や「外食・飲食店」も顧客の同じニーズを満たす強力なライバルになります。顧客がこれまで何にお金や時間を使っていたかを考え、最低でも3社程度の競合をピックアップしましょう。 コツ⑤ 素人が「これなら勝てそう!」と直感できる比較表を作る 競合との違いを文章で長々と説明しても、業界に詳しくない読み手にはなかなか伝わりません。最も効果的なのは、「自社と競合のスペック比較表」を1枚作ることです。 縦軸に競合他社、横軸に「顧客が重視するポイント(価格・品質・スピード・アフターフォローなど)」を並べ、自社が勝っている部分に「◎」をつけるなどして視覚化します。「業界外の人がパッと見て、『なるほど、これなら勝てそうだ』と直感的に納得できるか」を基準に、一人よがりにならない比較表を心がけてください。 まとめ 市場分析と競合分析は、難しい学問ではありません。「自分はどこで戦い、誰に、どうやって勝つのか」という極めて現実的な作戦を立てるためのステップです。身の丈に合ったデータを集め、自信を持って自社の優位性をアピールしましょう。 事業計画書の各論について、今後の記事でも順次取り上げていく予定でおります。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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第3回 事業計画書の心臓部! ~「ビジョン・事業概要」で読み手の心を掴む書き方~
事業計画書の冒頭にある「ビジョン」や「事業概要」。あなたはここを「単なる挨拶文」や「自分の熱い思いを語る場所」だと思っていませんか? 実は、金融機関や投資家といった読み手は、最初の数行で計画書全体への印象が大きく左右されると言われています。読み手は最初からあなたの事業に強い関心を持っているわけではなく、むしろ「本当に大丈夫か?」という疑いの目を持っています。 今回は、そのネガティブな壁をぶち破り、最初の数行で「このビジネスは面白そうだ」「ぜひ話を聞いてみたい」と読み手を前のめりにさせるための、表現の工夫と書き方のコツを解説します。 冒頭で読み手を突き放してしまう「3つのNG」 まずは、読み手が「この計画書はダメだ」と判断してしまう典型的なパターンを知っておきましょう。 何を売ろうとしているのかわからない(専門用語ばかりで難解) 話が大きすぎて怪しい(抽象的な夢物語ばかり語っている) 儲かるビジネスになる「におい」がしない(事業としての現実感がない) これらを避け、読み手の頭の中に「儲かりそうで、社会の役に立つビジネスの映像」をくっきりと浮かび上がらせるための3つのポイントを紹介します。 読み手の心を掴む「表現の工夫」3つのポイント ポイント① 専門用語を捨て、業界外の人にもわかる言葉で書く 融資や出資を判断する読み手は、あなたの業界の専門家ではありません。自分の技術やサービスの凄さを伝えようとするあまり専門用語を多用すると、相手は理解を諦めてしまいます。 「この分野に詳しくない家族や友人が読んでも、『なるほど、それはすごいね!』と直感的にイメージできる言葉で書く」ことを意識してください。技術的なスペックよりも、「それによって顧客がどれほど役立ち、喜ぶか」を伝えることが重要です。 ポイント② 「機能」ではなく、「誰の痛みを、どう解決するか」を描く 「〇〇という機能を持つアプリを開発します」といった機能説明に終始してはいけません。説得力のある事業概要をつくるには、以下の4つの要素を意識して表現するのが効果的です。 ミッション 実現したい理想の世の中 顧客のメリット なぜその人は買ってくれるのか(どんな痛みが解決するか) コアエッセンス なぜ、買いたくなるのか 自社の強み 他社にはない独自の強み たとえば、「整体・治療院を開業します」と書くだけでは何も伝わりません。しかし「デスクワークで慢性的な肩こりや腰痛に悩むビジネスパーソンが、週1回の施術で痛みを気にせず仕事に集中できるようサポートします」と表現するだけで、誰の悩みをどう解決し、社会にどう役立つのかが具体的にイメージでき、説得力がぐんと増します。 ポイント③ ただの「夢物語」にせず、現実感を持たせる 「5年後に世界中の人を幸せにする」といった壮大すぎるビジョンは、かえって読み手に不安を与えます。夢を語ることは大切ですが、それと同時に「1〜2年後の明確な事業イメージ」をしっかりと書き込むことが鍵です。 市場の構造がどう変化しているから今がチャンスなのか、自社のアプローチでいかに現実的に事業を立ち上げようとしているのかという「客観的な事実」と「ビジネスセンス」を冒頭に少し混ぜ込むだけで、読み手は安心してその後のページを読み進めることができます。 まとめ 冒頭のビジョン・事業概要は、自分の言いたいことを書く場ではありません。「業界外の読み手の頭の中に、具体的なビジネスの成功イメージを描かせる」ための最大のプレゼン領域です。 3つのNGを避け、4つの要素を意識した表現に磨き上げることで、計画書全体の評価は大きく変わります。ぜひ第三者の目線で読み返してみてください。 事業計画書の各論について、今後の記事でも順次取り上げていく予定でおります。引き続きご覧いただけますと幸いです。
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