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第4回 経営者のための法人税入門 ~申告期限・中間申告・更正の請求——知っておきたい手続きの基本~

ここまで第1回から第3回にわたり、法人税の基本構造から経費のルール、中小企業向けの優遇税制までを解説してきました。法人税の全体像はひと通り押さえられましたが、実務ではこれに加えて、申告書の提出期限や納税方法、申告を間違えたときの対処法といった手続きも把握しておく必要があります。

最終回となる今回は、申告・納税にまつわる基本的な手続きと特例、そして申告後に誤りが見つかったときの訂正手続きを確認していきます。


ポイント① 会社設立後にまず行う手続き——設立届の提出

会社の設立登記が完了したら、まず本店所在地を管轄する税務署長に対し、設立の日以後2か月以内に「法人設立届出書」(法人税法第148条)を提出します。税務署へ提出する際に添付するのは、定款等の写しのみで足ります。

国(税務署)だけでなく、地方税の申告先となる都道府県税事務所や市区町村役場にも、それぞれの自治体が定める期限内に設立届出を行います。ただし、東京23区内に本店を置く法人は、都税事務所への提出のみで足り、区役所への届出は不要です。なお、地方自治体への届出には、税務署とは異なり登記事項証明書の添付が必要となるのが一般的です。

なお、この「設立の日以後2か月以内」という期限は、あくまで設立時の届出に関するものです。後述する「事業年度終了の翌日から2か月以内」という決算後の申告期限とは対象が異なりますので、混同しないよう注意してください。

給与を支払う場合の届出

役員報酬や従業員の給与を支払う場合は、法人設立届出書とは別に、給与から源泉徴収した所得税の納付に関する届出も必要です。

給与支払事務所等の開設届出書 給与等の支払事務を取り扱う事務所を開設した日から1か月以内に、所轄税務署へ提出します
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 毎月の源泉所得税の納付を年2回にまとめられる特例の適用を受けるための申請書です

給与から天引きした源泉所得税は、原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納付します。つまり毎月給与を支払っていれば、原則として毎月の納付事務が発生します。

ただし、給与の支給人員が常時10人未満の会社は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、納付を年2回にまとめられます。1月から6月の天引き分を7月10日までに、7月から12月の天引き分を翌年1月20日までに納付する形です。適用が始まるのは申請書を提出した月の翌月に支払う給与分からで、申請した月の納付分は原則どおり翌月10日までの納付が必要な点に注意してください。なお、対象は給与・賞与・退職手当・税理士等への報酬から源泉徴収した所得税に限られ、原稿料や講演料などは対象外です。

この特例は毎月の納付事務の負担を大きく減らせます。役員1人だけの会社でも、給与を支払う以上は源泉徴収義務者となるため、あわせて提出しておくとよいでしょう。なお、「常時10人未満」の人数には、正社員やパートだけでなく役員も含めて判定する点に注意が必要です。

税務以外の手続きにも注意

会社設立後の手続きは、税務署への届出だけではありません。法人は役員1人だけの会社であっても、健康保険・厚生年金保険への加入が義務づけられており、設立から5日以内に「新規適用届」を管轄の年金事務所へ提出する必要があります。また、従業員を雇用した場合は、労働基準監督署(労災保険)やハローワーク(雇用保険)での手続きも必要です。


ポイント② 優遇税制のカギを握る「青色申告承認申請書」

法人設立届出書とあわせて設立初年度から必ず検討したいのが、「青色申告承認申請書」の提出です。第3回で確認した欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例など、中小企業向けの優遇税制の多くは、青色申告書の提出が適用の要件になっています。

青色申告の承認を受けるには、原則として、適用を受けようとする事業年度開始の日の前日までに、税務署へ「青色申告承認申請書」を提出します。ただし新設法人の設立第1期は特例があり、設立の日以後3か月を経過した日の前日と、その事業年度終了の日の前日のうち、いずれか早い日までに提出すれば足ります。

この申請を忘れると自動的に白色申告として扱われ、欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例、中小企業投資促進税制などの優遇の多くが受けられなくなります。法人設立届出書とあわせ、設立初期でとくに重要な届出のひとつです。


ポイント③ 申告期限に間に合わないときの「申告期限の延長の特例」

法人税の確定申告と納税は、原則として決算日(事業年度終了の日)の翌日から2か月以内に行います。しかし、会計監査人(公認会計士など)による監査を受ける会社や、定款の定めで株主総会を決算から3か月後に開催する会社では、この2か月以内に申告書を提出することが難しい場合があります。

そうした法人のために、あらかじめ届出・申請をしておくことで申告期限を延長できる制度が、国税・地方税それぞれに用意されています。仕組みは共通で、延びるのは「申告書の提出期限」だけであり、「税金の納付期限」は延びない点が最大の注意点です。

  国税(法人税・地方法人税) 地方税(法人住民税・法人事業税)
手続き 税務署長へ「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」を提出 都道府県知事(法人事業税・都道府県民税分)と市区町村長(市町村民税分)それぞれへ届出書を提出(法人税と同じ期間、申告期限が延長される)
手続きの期限 適用を受けようとする事業年度終了の日(決算日)まで 各自治体の案内に従う(法人税の手続きとあわせて行うのが一般的)
延長される期間 原則1か月間(さらに長い期間の延長が認められる場合もある) 法人税と同じ期間
納付が遅れた場合 利子税 延滞金

法人住民税は都道府県分と市町村分の両方から成るため、地方税の届出は原則として都道府県税事務所と市区町村役場の両方に行います(東京23区は、設立届のときと同様、都税事務所への届出のみで足ります)。

申告期限を延長しても、納付は原則どおり決算後2か月以内に行う必要があります。延長された3か月目に納付した場合、本来の納付期限(2か月目)の翌日から実際に納付した日までの期間について、国税では「利子税」、地方税では「延滞金」という利息にあたる負担がかかります。

これを避けるため、この特例を使う会社の多くは、本来の納付期限までにおおよその税額を先に納める「見込納付」を国税・地方税の両方で行います。その後、確定した申告書を提出し、見込納付額との差額を精算(追加納税または還付)します。


ポイント④ 期中にも納税が必要になる「中間申告」

法人税の申告・納税は、年1回の決算時だけとは限りません。一定規模の法人には、期の途中でもう一度、前もって申告・納税する義務が生じます。これを「中間申告」といいます。

中間申告が必要になる基準

事業年度が6か月を超える普通法人のうち、前期の確定法人税額を前期の月数で割って6を掛けた金額(前期実績基準額)が10万円を超える法人は、中間申告の義務が生じます。前期実績基準額が10万円以下の場合(新設法人の第1期や、前期が赤字だった法人など)は、中間申告は不要です。

2つの中間申告方法

予定申告(原則) 前期実績基準額(前期の確定法人税額÷前期の月数×6)をそのまま納税額とする方法。計算がシンプルで手間がかからない
仮決算による中間申告(特例) 事業年度開始から6か月間を1つの事業年度とみなして仮決算を行い、その期間の実績に基づいて中間申告税額を計算する方法。前期は黒字でも今期上半期が赤字に転落しているような場合、この方法で期中の納税額を抑えられることがある

中間申告・納税の期限は、原則として事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です。


ポイント⑤ 申告後に誤りが見つかったときの対処法——修正申告と更正の請求

確定申告を終えたあとに、売上の計上漏れや経費の二重計上といった誤りが見つかることは珍しくありません。申告内容に誤りがあった場合は、次のいずれかの手続きで訂正します。

税額を少なく申告していた場合——修正申告

本来納めるべき税額より少なく申告していた(または欠損金を過大に申告していた)場合に、自ら正しい額へ修正し、不足分を納付する手続きが「修正申告」です。

修正申告を行うと、過少計上していた売上や否認された経費について、その事業年度の別表四で加算調整し、別表五(一)の利益積立金額を修正する実務が生じます。

税務署の指摘を受ける前に自主的に修正申告を行えば、「過少申告加算税」を回避または軽減できる場合がありますが、本来の期限からの遅延利息にあたる「延滞税」は原則として発生します。誤りに気づいたら早めに対応することが大切です。

税額を多く申告していた場合——更正の請求

本来より多く納めていた(または欠損金を過少に申告していた)場合に、税務署へ正しい額への訂正と還付を求める手続きが「更正の請求」です。

更正の請求ができる期間は、国税通則法第23条により、原則として法定申告期限から5年以内です(欠損金額に関する更正の請求は、法人税に係るものは10年以内)。この期限を過ぎると、明らかな計算ミスが判明しても税金を取り戻せなくなるため注意が必要です。

手続きとしては、税務署長へ「更正の請求書」を提出し、請求の基礎となる事実(計算ミスや証拠書類など)を証明する資料を添付します。税務署の審査を経て正当と認められれば、払いすぎた税金が還付されます。


まとめ

会社を設立したら、設立の日以後2か月以内に税務署長へ「法人設立届出書」を提出する(決算後の申告期限とは対象が異なる点に注意)
給与を支払う場合は、事務所開設日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出し、給与の支給人員が常時10人未満なら「源泉所得税の納期の特例」もあわせて検討する
法人は役員1人でも健康保険・厚生年金への加入が義務で、設立から5日以内に「新規適用届」を年金事務所へ提出する
欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例などの優遇を受けるには「青色申告承認申請書」の提出が必須で、設立第1期は設立の日以後3か月を経過した日の前日などが期限となる
申告期限は事前の届出で1か月延長できるが、納付期限は延びないため、見込納付をしないと国税は「利子税」、地方税は「延滞金」がかかる
前期実績基準額が10万円を超える法人は期中に「中間申告」の義務が生じるが、業績が悪化している場合は「仮決算」により納税額を抑えられることがある
税額を多く納めていた場合は、原則として法定申告期限から5年以内であれば「更正の請求」で取り戻せる

全4回にわたる連載を通じて、法人税の全体像、申告・納税のスケジュール、損金の考え方、特例・優遇措置や基本的な手続きまでを確認してきました。役員報酬の改定や設備投資など、大きな意思決定を行う際には、この連載で押さえた知識を土台としながら、顧問税理士などの専門家に相談しつつ進めていただければと思います。


連載の総まとめ 法人税の実務プロセス

ここまで解説してきた内容を、法人税の実務プロセスとして振り返ります。

ステップ 内容
① 決算書上の「利益」を算出 収益-費用(第1回)
② 別表調整(申告調整)を行う 役員報酬・交際費・減価償却・特別償却・貸倒損失・寄附金・期ズレなどを加算・減算(第2回・第3回)
③ 課税標準「所得金額」を確定 益金-損金(第1回)
④ 税額を計算し、税額控除を適用 所得金額に税率を適用し、中小企業投資促進税制・賃上げ促進税制などの税額控除で法人税額を軽減(第3回)
⑤ 申告・納税 原則として事業年度終了の翌日から2か月以内に、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場へ申告・納付(第4回)

法人税は複雑で厳格なルールに縛られている面がありますが、それは裏を返せば、ルールを正しく理解し、期限内の届け出や計画的な準備を行っている会社には、法律を通じてメリットが用意されているということでもあります。「わかりにくいから」と後回しにせず、この連載でつかんだ全体像を踏まえながら、無理のない形で会社の財務基盤づくりを進めていただければと思います。


参考文献

安部和彦『事例で解説 法人税の損金経理』清文社
濱田康宏・岡野訓・内藤忠大・白井一馬・村木慎吾『法人税の純資産――法人税法施行令8条・9条の口述コンメンタール』中央経済社
山本守之『税務調査の現場から法人税の争点を検証する[増補版]』税務経理協会
村木慎吾・内藤忠大・濱田康宏・岡野訓・白井一馬『「むずかしい税法条文」攻略本』中央経済社

本連載の内容は、令和8年8月時点の法令等に基づいています。税制は改正が頻繁に行われるため、実際の適用にあたっては最新の法令等をご確認いただくか、顧問税理士などの専門家にご相談ください。