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第4回 経営者のための起業・会社設立ガイド ~融資を受ける最大のチャンスは「創業前・創業直後」——創業融資の活用法と審査をクリアする3つのポイント~
会社設立の手続きが完了し、いよいよ事業がスタート。そこで多くの起業家が直面する最大の壁が「資金繰り」です。今回は、起業家が知っておくべき「お金の集め方」の基本と、金融機関から最も融資を引き出しやすい「最大のチャンスは創業前・創業直後にある」という逆説的な事実について解説します。
ポイント① 致命的な誤解「困ってから借りればいい」
起業家の多くは、「まずは自己資金だけで小さく始めて、売上が上がって軌道に乗ってから銀行にお金を借りよう」と考えがちです。しかし、この「困ってから借りればいい」という考え方こそが、会社を倒産危機に追い込む要因になり得ます。
事業をスタートすると、売上が入金されるよりも先に、仕入代金・家賃・人件費などの支払いが次々と発生します。創業直後は売上の伸びに対してコストが先行し、「赤字の谷」に落ち込むのが一般的です。手元の資金が底をつきそうになってから慌てて銀行に駆け込む起業家は少なくありませんが、「売上が上がらない赤字の会社」「手元にお金がない会社」という実績ができてしまうと、金融機関から融資を受けるハードルは極めて高くなります。資金調達においては、「雨が降る前に、晴れのうちに傘を借りる」という考え方が重要です。
ポイント② 逆転の発想——融資の最大のチャンスは「創業前・創業直後」
一方で、「創業前(または創業直後)」は事情が全く異なります。この時点ではまだ事業の「過去の業績(決算書)」がないため、過去の数字に縛られることがありません。融資担当者は、「創業計画書の妥当性」と経営者の「経験値」「自己資金」というポジティブな要素で審査をしてくれます。
厳しい業績の足かせがない創業時こそが、有利な条件でまとまった資金を調達できるチャンスと言えます。創業融資で得た余裕資金は、事業が軌道に乗るまでの「時間を買う」ための命綱になります。
ポイント③ 創業融資の2大主要先——「日本政策金融公庫」と「制度融資」
実績のない起業家はどこからお金を借りればよいのでしょうか。メガバンクなどの大手都市銀行は、基本的には創業間もない小規模な会社を相手にしてくれません。起業家が頼るべき主な選択肢は以下の2つです。
| 日本政策金融公庫の創業融資 | 政府が100%出資する公的な金融機関で、小規模事業者や起業家の支援を主要な目的としています。代表的な「新規開業・スタートアップ支援資金」は、原則として「無担保・無保証人(社長個人の連帯保証が不要)」で利用できるという、起業家にとってリスクの低い制度です(※旧「新創業融資制度」は2024年3月末に廃止され、現制度に統合されています)。 |
| 地方自治体の「制度融資」 | 都道府県や市区町村といった自治体と、信用保証協会、指定金融機関の三者が協調して行う公的な融資制度です。自治体によっては支払う利息や保証料の一部を補助してくれる手厚い制度を設けている場合もあり、実質的に低い負担で資金調達が可能です。 |
ポイント④ 審査をクリアするカギは「自己資金×経験値×事業計画書」
公的な創業融資を引き出すためには、審査をクリアする必要があります。審査において金融機関が重視する主なポイントは以下の通りです。
自己資金の準備(見せ金・タンス預金はNG)
自己資金は「事業に対する本気度」と「計画性」の証明です。融資額の目安としては、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が要件とされますが、実務上は3分の1程度あると審査に有利です。ここで注意すべきなのが「見せ金」です。審査の直前に知人から一時的に借りて口座に入れても、通帳の不自然な入金履歴からすぐに見破られ、致命的なマイナス評価となります。また、銀行に預けずに手元に置いている「タンス預金」も、出所が証明できないため自己資金としては認められません。毎月コツコツと自身の口座に貯蓄してきた通帳の記録こそが、最大の信用となります。
経営者の経験とノウハウ
これから始める事業について、過去にどれだけの経験やノウハウを積んできたかが問われます。その業界の経験が全くない場合は説得力が低下するため、最低でも半年〜1年程度の実務経験を積んでおくことが望ましいとされています。
「客観的根拠」のある事業計画書
「誰に、何を、どのように売り、どれだけの利益を出すのか」を紙に落とし込んだものが創業計画書です。融資担当者が最も注視するのは「売上予測の根拠」です。単なる希望的観測ではなく、客観的なデータや自身の経験に基づいた納得感のある数字の組み立てが求められます。
ポイント⑤ 公庫の融資は「信用金庫」の口座に着金させる
最後に、専門家ならではの実践的なポイントをお伝えします。日本政策金融公庫から融資を受けることに成功した場合、そのお金を振り込んでもらう先の口座をどこにするかが重要です。
公庫からの借入金は、地域密着型の「信用金庫」や「信用組合」で新たに法人口座を開設し、そこに着金させることをお勧めします。信用金庫等は小規模な企業を大切にしてくれます。そこに公庫からのまとまった融資額が着金し、事業の売上が入金され、公庫への返済が毎月確実に行われているという「優良な実績」を、信用金庫の担当者に間近で見てもらうのです。この実績を積んでおくことで、創業から数年後に事業拡大のための追加資金が必要になった際、その信用金庫からスムーズに融資を引き出しやすくなるという、将来に向けた布石になります。
まとめ
資金が枯渇して手遅れになる前に、実績という足かせが少ない「創業前・創業直後」のチャンスを活かして創業融資を検討することをお勧めします。ご自身での申請に不安がある場合は、税理士などの財務・税務の専門家をパートナーとして活用することで、より有利な条件での資金調達につながる場合があります。
黒字化までの税務戦略・赤字の繰越と青色申告の活用法・起業1年目の経営管理など、起業・会社設立に関する実践的なテーマについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
