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第6回 事業計画書と融資審査の関係 ~金融機関が実際に見ているポイントを解説~

苦労して作成した事業計画書を、金融機関はどのような基準で「採点」しているのでしょうか?

融資審査の裏側や、銀行員が実際にチェックしているポイントを知ることで、事業計画書は単なる「提出書類」から、融資を引き出す「強力なツール」へと変わります。今回は、審査の現場目線で「ここを押さえれば通りやすくなる」という実践的なポイントを解説します。


ポイント① 銀行員が必ずチェックする「審査の3大原則」

金融機関の融資審査において、案件の中身を問わず必ずチェックされる基本的なポイントがあります。それが以下の3つです。

1. 資金使途(何に使うのか)

必要な資金が、設備資金なのか運転資金なのかという使い道です。ここが不明確な融資には応じてもらえません。

2. 返済財源(どうやって返すのか)

貸したお金を何から返すのかという根拠です。銀行は損益計算書上の「利益」そのものではなく、利益に、お金の出ていかない費用である減価償却費を足し戻した「簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)」を返済財源として見ています。

3. 保全(万が一の時はどうするか)

計画通りにいかず返済できなくなったときに備え、担保や保証人などの回収手段(保全)が確保されているかを確認します。なお、近年は「経営者保証に関するガイドライン」にもとづき、経営者の個人保証を求めない融資も広がっています。その場合も、会社と個人の資産がきちんと分けられていることや、財務情報を適時に開示していることなどが求められます。

これら3つは、個人間でお金の貸し借りをする際にも確認する当たり前のことですが、金融機関の審査でも同様に最も重視される大原則です。


ポイント② 融資の合否を分ける「債務償還年数」

事業計画書の数値から、銀行員が「この会社は借り過ぎではないか」を測る最大のモノサシがあります。それが「債務償還年数」です。

債務償還年数とは、「現在の借入金を何年で返済できそうか」を表す指標で、以下の算式で計算されます。

債務償還年数 借入金残高 ÷ 簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)

一般的に、銀行の基準では「この債務償還年数が10年以内であること」が正常な会社の目安(10年ルール)とされています。10年を大きく超えている場合は「すでに借り過ぎている」と判断されやすく、新たな融資のハードルは高くなります。

なお、実際の審査では、借入金残高からそのまま計算するのではなく、手元の現預金や、事業を回すために常に必要な運転資金(売掛金+在庫-買掛金)の分を差し引いた「要償還債務」をもとに計算する金融機関も多くあります。また、設備を多く抱える業種などでは目安となる年数が異なることもあります。

利益計画から導き出されるキャッシュフローが、この「10年ルール」をクリアできる水準になっているか、提出前にぜひご自身で電卓を叩いてセルフチェックしてみましょう。たとえば借入金残高が3,000万円、税引後利益が200万円、減価償却費が100万円の会社なら、3,000万円÷300万円=10年で、ちょうど目安の上限です。


ポイント③ 立派な計画書でも落ちる?「経営者の会計理解度」

「数字も整っているのに、なぜか審査に落ちてしまった……」というケースがあります。実は、銀行は書類や数字だけでなく、面談などを通じて「経営者の人物評価」も厳しく行っています。

その中で大きなマイナス評価になってしまうのが、「社長自身が会計(数字)を理解していないこと」です。どれほど丁寧に作り込まれた事業計画書が提出されても、銀行からの「なぜこの売上予測になるのですか?」「資金繰りはどうなっていますか?」という質問に対し、社長が自分の言葉で的確に答えられなければ、「外部の専門家に丸投げして作っただけだ」と見抜かれてしまいます。

社長自身が自社の財務を理解し、数字の根拠を自分の言葉で語れることが、銀行からの「信頼」に直結するのです。


まとめ

金融機関は、「資金使途・返済財源・保全」の3大原則をベースに、「債務償還年数(10年ルール)」で安全性を測り、最後に「経営者自身の会計への理解度」を見ています。これらを意識して事業計画書をブラッシュアップし、自信を持って面談に臨めるよう準備しましょう。

自社の債務償還年数の計算や、銀行員が納得する「根拠のある数字」の作り方に不安がある方は、お気軽に当事務所へご相談ください。社長ご自身の言葉で語れる事業計画づくりを、税理士の視点からサポートいたします。

事業計画書の各論について、今後の記事でも順次取り上げていく予定でおります。引き続きご覧いただけますと幸いです。

※本記事は掲載時点の法令・税制・各種制度に基づいて作成しています。その後の改正や制度変更等により、記載内容が現状と異なる場合があります。個別の融資・補助金・税務のご判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。

【2026年10月7日 更新】債務償還年数の考え方について、記載内容を確認し、一部修正しました。