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第3回 経営者のための経営分析実践[応用編] ~会社が本当に儲かっているかを示す真の指標「ROA」と「ROE」~
P/Lの利益を「比率」で見ることでコスト体質の変化を見抜く方法をお伝えしてきました。今回は、P/L(利益)とB/S(資産・負債・純資産)の数字を組み合わせ、企業の「真の稼ぐ力」を測る指標について深掘りしていきます。
ポイント① 利益の「額」だけを追う罠——「前年超え」の落とし穴
日本企業の多くの経営者や部門責任者は、「部門損益(P/L)」だけを見ています。「前年度よりも売上を増やす、利益の金額を増やす」という「前年対比型」の目標には一生懸命に取り組みますが、「その利益を出すために、いくらの資産(お金)を会社から預かっているのか」を把握している人は驚くほど少ないのが現実です。
たとえば、「今期は営業利益が5,000万円出た!前年の3,000万円から大幅アップだ!」と喜んでいる会社があったとします。しかし、その利益を出すために銀行から多額の借金をして5億円の新工場を建て、大量の在庫を抱え込んでいたとしたらどうでしょうか。投資額が何倍にも膨れ上がっているのに利益が2,000万円しか増えていないのであれば、それは「投資効率が悪化している(商売が下手になっている)」ことを意味します。
ビジネスの基本は「リスクに見合ったリターンを得ること」です。「いくら稼いだか(利益の額)」だけでなく、「いくら投資して、その利益を稼ぎ出したか(投資に対する効率)」を見なければ、会社が本当に儲かっているのかを正しく評価することはできません。
ポイント② 誰の目線で「稼ぐ力」を測るか——ROAとROE
「投資とリターン」の関係を、誰の目線で見るかによって使う指標が変わります。
| ROA(総資産利益率) | 「経営者」の目線。経営者は借入金も含めた「すべての財産(総資産)」を投資として運用しています。その全財産を使って、どれだけ利益を稼いだかを示します。 |
| ROE(自己資本利益率) | 「株主」の目線。株主にとって会社の正味財産こそが自らの「投資金額」です。株主が投下した自己資本(純資産)に対して、どれだけリターン(当期純利益)を生み出したかを示します。 |
ここで、架空の中堅メーカー・C社の2つの事業部をROAの視点で比較してみましょう。
| X事業部 | Y事業部 | |
| 営業利益 | 5,000万円 | 3,000万円 |
| 使っている総資産 | 10億円 | 3億円 |
| ROA | 5% | 10% |
C社の社長はこれまで利益の「額」だけを見て、5,000万円を稼ぎ出すX事業部ばかりを高く評価し、エース級の人材と資金を投入していました。しかしROAを計算してみると事態は一変します。Y事業部の方が、少ない資産で効率よく利益を稼ぎ出している「優秀な事業部」であることがわかります。この事実に気づいた社長は、次期の中期経営計画において資金を投下する優先順位をY事業部へと切り替えるという、合理的な「次の一手」を打つことができました。
ポイント③ 株主・投資家は「額」ではなく「パーセンテージ」を要求する
多くの経営者が勘違いしていますが、投資家や株主が「売上を増やしてくれ」「利益の金額を増やしてくれ」と言うことはありません。彼らが経営者に常に求めるのは、投資に対する「パーセンテージ(利回り)」です。
社内の会議で「うちの部門は利益の額こそ少ないですが、一応黒字ですから会社に貢献していますよね?」と胸を張る管理職がいます。しかし、そのわずかな黒字を出すために莫大な資産を抱え込み、ROAが1〜2%程度しかないとしたら、資産の使い方として非常に効率が悪い状態と言わざるを得ません。
「ウチは利益が出ている」と安心する前に、「その利益を出すために、いくらの資産を使っているか」を計算する習慣を持ちましょう。利益の「額」ではなく「効率(%)」で自社を評価することが、本当に強い会社をつくる第一歩です。
まとめ
ROAとROEは、P/L(利益)とB/S(資産・資本)を組み合わせた、企業の実力を測る究極の指標です。単に利益の額を追うだけでなく、「どれだけの資産を使って、その利益を稼いだか」という投資効率の視点を持つことで、経営判断の精度は格段に上がります。
財務レバレッジと安全性分析・資本回転率・CVP分析など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
