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最終回 経営者のための経営分析実践 ~分析結果を「次の一手」に変えるプロフィットツリーの活用法~

収益性、安全性、生産性と、会社の過去から現在までの「健康状態」を診断してきました。しかし、経営分析は「現状を知って終わり」ではありません。分析結果をもとに、未来に向けた「次の一手(改善策)」を打ち出すためのスタート地点なのです。


ポイント① 利益を論理的に分解する「プロフィットツリー」

経営分析で「利益率が低い」「生産性が低い」という課題が見つかった場合、それをどう改善すればよいのでしょうか。ここで役立つのが、利益が増える道筋を体系化した「プロフィットツリー」という考え方です。

会社の利益は、以下のように分解することができます。

利益 =(販売数量 × 販売単価)−(材料などの使用量 × 単価)− 固定費

この式を見ると、利益を増やすためのアクションが論理的に整理できます。「なんとなく売上を増やせ」という精神論ではなく、どの変数を動かすかを具体的に考えることができるのです。

活用のポイント:プロフィットツリーは、経営会議や進捗会議で「どこに問題があるか」を議論する際の共通言語として活用できます。「売上が落ちている」という事実に対して、「販売数量の問題か、単価の問題か」を切り分けるだけで、打つべき手が全く変わります。経営分析の数字をプロフィットツリーに当てはめて議論する習慣を持つことで、会議の質が格段に上がります。


ポイント② 「次の一手」はどこを改善するか

プロフィットツリーを使うと、利益を増やすための具体的なアクションが以下の4つのどれに当てはまるかが明確になります。

販売数量を増やす 新規開拓、リピート率向上、販売チャネルの拡大など
販売単価を引き上げる 高付加価値商品の開発、価格改定、サービスの差別化など
変動費を減らす 仕入単価の交渉、ロスの削減、外注コストの見直しなど
固定費を削減する ムダな経費の見直し、業務の効率化、人員配置の最適化など

活用のポイント:4つのアクションは同時にすべてを追うのではなく、経営分析の結果をもとに優先順位をつけることが重要です。たとえば、収益性分析で粗利率の低下が確認されたなら「変動費削減か単価引き上げ」を優先し、生産性分析で労働生産性の低下が確認されたなら「販売数量増加か固定費削減」を優先するといった形です。

このとき、アクションの「即効性」と「副作用」にも注意しましょう。たとえば、安易に販売単価を引き上げると、客離れが起きて「販売数量が減る」という副作用が起こりやすいため、単なる値上げではなく付加価値の向上がセットになります。一方で、仕入単価の交渉やロスの削減といった「変動費を減らす」アクションは、お客様の需要に悪影響を与えずに自社の努力で完結できるため、最も即効性が高い改善策と言えます。分析結果から課題を特定し、効果が出やすいものから論理的にアクションを結びつけることで、経営判断に説得力が生まれます。


ポイント③ 経営分析から、次の「事業計画(PDCA)」へ

事業計画書の作成と経営分析は、決して独立したものではありません。事業計画(Plan)を立てて実行(Do)し、決算書を通じて経営分析で検証(Check)を行い、プロフィットツリーなどで次の一手を考えて計画をアップデート(Action)する——この「経営のPDCAサイクル」を回し続けることこそが、強い会社を作る基盤です。

活用のポイント:このPDCAを確実に回すためには、分析のタイミングと頻度を決めることが重要です。年1回の決算分析に加え、月次での簡易的な収益性・資金繰りのチェックを習慣化することをお勧めします。また、分析結果を次期の事業計画に数値として反映させることで、「感覚ではなく根拠のある計画」が作れるようになります。事業計画書の連載記事で学んだ「売上予測の根拠の積み上げ」や「逆算思考」と組み合わせることで、計画の精度は一段と高まります。


まとめ

経営分析は過去を振り返るためではなく、未来の意思決定の精度を高めるためのツールです。プロフィットツリーで課題を論理的に整理し、具体的なアクションに落とし込む習慣を持つことで、経営者としての判断力は格段に上がります。

第1回でお伝えした通り、経営分析とは会社の「健康診断」です。健康診断の結果をもとに生活習慣を改善するように、分析結果を次の行動につなげることが重要です。事業計画という「未来の羅針盤」と経営分析という「現在地を確認するGPS」の両方を使いこなすことで、どんな環境の変化にも動じない強い会社をつくることができます。

「自社の本当の稼ぐ力を知りたい」「数字に基づいた根拠ある次の一手を打ちたい」という方は、お気軽に当事務所へご相談ください。決算書の作成だけでなく、経営分析と事業計画の策定・進捗管理まで、社長と伴走しながらご支援しております。

 

※本記事は掲載時点の法令・税制に基づいて作成しています。
その後の税制改正等により、記載内容が現状と異なる場合があります。
個別の税務判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。

 

【参考文献】本連載の執筆にあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。
・『”ギモン”から逆引き!決算書の読み方』(南伸一 著/西東社)
・『この1冊ですべてわかる 経営分析の基本』(林總 著/日本実業出版社)
・『新版 財務3表一体理解法』(國貞克則 著/朝日新聞出版)