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第2回 経営者のための経営分析実践[応用編] ~P/Lは金額ではなく「比率」で見よ!利益構造の真実~
決算書の数字は「過去・他社・目標」の3つと比較して初めて「異常値」が見えてくることを前回お伝えしました。今回は、会社の成績表である損益計算書(P/L)の数字を比較する際の「極意」について解説します。
ポイント① 「売上アップ!」と喜ぶ社長の死角
建材卸売業を営むB社の社長は、決算書を見て大喜びしていました。「今期の売上は5億円だ!前期の3億円から大幅アップで過去最高だ!」しかし、経理担当者の表情は晴れません。「社長、たしかに売上は伸びましたが、営業利益は前期と同じ3,000万円のままです」
売上が3億円から5億円に2億円も増えたのに、本業の儲けである営業利益が1円も増えていない。これは、売上を増やすためにそれ以上のペースで経費(コスト)が膨らんでしまっている証拠です。
P/Lを金額(絶対額)だけで見ていると、「売上が増えて良かった」「利益が出ているから大丈夫」といった表面的な感想しか出てきません。金額だけを追う経営は、水面下で抱え始めている「コスト体質の悪化」という重大な病のサインを見落としてしまう危険性があります。
ポイント② P/Lは「金額」ではなく「比率」に置き換える
会社の本当の利益構造を知るためには、P/Lの各項目を金額ではなく、「売上高を100%としたときの比率」に置き換えて比較する必要があります。先ほどのB社の数字を比率に置き換えてみましょう。
| 前期(売上3億円) | 当期(売上5億円) | |
| 売上高 | 3億円(100%) | 5億円(100%) |
| 売上原価 | 2.1億円(原価率70%) | 3.5億円(原価率70%) |
| 販売費及び一般管理費 | 6,000万円(販管費率20%) | 1.2億円(販管費率24%) |
| 営業利益 | 3,000万円(営業利益率10%) | 3,000万円(営業利益率6%) |
仕入価格である「原価率」は70%のまま変わっていませんが、給与や広告費・運賃などの「販管費率」が20%から24%へと4ポイントも悪化し、結果として営業利益率が10%から6%に急落している事実が浮き彫りになりました。
ポイント③ 利益率の悪化は「無理な商売」の警告サイン
比率の悪化(異常値)を見つけたら、「なぜそうなったのか」という原因を現場に確認します。調べてみると、B社では売上目標を達成するために通常は取引しないような遠方の顧客まで無理に営業を広げていました。その結果、売上は伸びたものの、長距離の「運送費」が急増し、さらに新規顧客を獲得するための過剰な「広告宣伝費」や「接待交際費」がかさんでいたのです。
利益率が低下しているということは、商売の効率が悪くなり、資金繰りに余裕がなくなっていることを意味します。薄利多売の戦略を意図的に取っているなら別ですが、気づかないうちに利益率が悪化しているのは非常に危険です。経営者は金額の増減に一喜一憂するのではなく、比率ベースで会社の体質を定点観測する習慣を持つことが大切です。
ポイント④ 利益率を改善するための「2つのアプローチ」
P/Lを比率で分析し利益率の悪化に気づいた場合、打つべき手は大きく2つしかありません。
① 固定費を減らす
人件費・家賃・無駄な交際費といった固定費(売上の増減に関わらず一定にかかるコスト)そのものを削減することで利益率を改善します。B社であれば、遠方への強引な営業をやめ、過剰な広告費や交際費を見直すことがこれに当たります。
② 付加価値(限界利益)を多く稼ぐ
売上から変動費(仕入原価など)を引いた「付加価値(限界利益)」を大きくすることです。「材料単価を引き下げて原価率を下げる」か、「商品・サービスの質を高め販売価格をアップさせる」という方法があります。安易な値引きに頼らず、顧客に価値を認めてもらい適切な価格で買ってもらう努力が必要です。
まとめ
損益計算書は、金額の羅列をただ眺めるのではなく、売上高を100とした「比率の推移」を過去と比較することで、利益構造の歪みにいち早く気づくことができます。異常に気づいたら「固定費の削減」か「付加価値の向上」のどちらに手を打つべきかを考えましょう。
ROAとROE・安全性分析・CVP分析など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。

