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第4回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~融資額を最大化する「協調融資」の仕組みと補助金に頼ってはいけない3つの理由~

これまでの連載では、融資を引き出すための「資金繰り表の作り方」から、「複数行取引によるプロパー融資へのステップアップ」、そして「決算報告のベストタイミングと信用格付けの高め方」についてお伝えしてきました。

第4回となる今回は、事業拡大のスピードをさらに上げるために融資額を最大化する「協調融資というスキーム」と、多くの経営者が勘違いして資金ショートの危機に陥りやすい「補助金・助成金のリアルな落とし穴」について解説します。


ポイント① 「1行単独」の限界を突破する「協調融資」スキーム

事業が大きく成長するタイミングでは、数千万円から時には億単位の追加資金が必要になることがあります。しかしこれを1つの金融機関に「単独で全額貸してほしい」と申し込むのは、審査のハードルを自ら極端に上げてしまう行為です。銀行員からすれば、1行で巨額の貸倒れリスクを背負い込む稟議書は社内で非常に通しにくいからです。

そこで有効なのが、複数の金融機関がリスクを分担して同時に融資を行う「協調融資」です。代表的なのが「日本政策金融公庫(政府系)」と「民間金融機関(信用金庫や地方銀行など)」が足並みを揃えて融資を行うスキームです。

例)総額5,000万円の調達が必要な場合 日本政策金融公庫から2,500万円 + A信用金庫から2,500万円を同時に借り入れる

ポイント② 銀行員が稟議を通しやすくなる「公庫のお墨付き」

なぜ協調融資にすると、1行単独では通りにくい高額な融資がスムーズに通るのでしょうか。それは銀行の担当者が上司を説得するための強力な根拠になるからです。

協調融資の提案を受けた信用金庫の担当者は、稟議書にこう書くことができます。「本件は政府系金融機関である日本政策金融公庫も事業の将来性を評価し、同額の融資を決定(検討)しています。当庫単独で全額リスクを負う案件ではなく、公庫とリスクを分散できるため、安全性が高い融資です」——金融機関は常に貸し倒れを恐れています。「公庫が審査を通した案件である」という事実と「他行とリスクを分け合える」という安心感は、銀行員にとって強力な後押しとなります。銀行の「リスクを嫌う心理」を逆手に取った、理にかなった交渉術と言えます。


ポイント③ 協調融資を成功させる「同時並行」と「情報開示」

協調融資を成功させる最大のポイントは、複数の金融機関に対して「同時並行」でアプローチし、全く同じ事業計画書と資金繰り表を提出して説明することです。

「まずは公庫に申し込んで、OKが出たら信金に行こう」という時間差のやり方では、金融機関同士が連携できず、協調融資の枠組みとして機能しません。融資相談の初期段階から「今回は総額○○万円の資金が必要なため、公庫さんと○○信金さんで半額ずつの協調融資をお願いしたいと考えています」と明言することが重要です。最初から金融機関同士の足並みを揃えさせ、隠し事のないガラス張りの計画を提示することが、高額な融資を引き出すための実践的なアプローチです。


ポイント④ 「補助金で資金繰り」が危険な理由——3つの落とし穴

融資とは別に、国や自治体が実施している「補助金・助成金」を活用したいと考える経営者の方も多いでしょう。確かに「返済不要」のお金は魅力的ですが、補助金ありきで事業計画を立てたり、当面の資金繰りのアテにしたりするのは資金ショートを引き起こしかねない危険な考え方です。経営者が知っておくべき3つの落とし穴があります。

落とし穴① 完全後払い(精算払い)の仕組み

補助金は先にお金がもらえる仕組みではありません。先に自社でお金を払って設備投資等を行い、事業が完了して実績報告を終えた後から、その費用の一部が補填される仕組みです。補助金をもらうためには、まず「全額を自己資金、あるいは銀行からの『つなぎ融資』で立て替える」必要があります。もし補助金を見込んで投資をしたのに銀行からつなぎ融資が下りなければ、資金ショートのリスクが生じます。

落とし穴② 採択される保証はどこにもない

要件を満たせばもらいやすい助成金とは異なり、高額な補助金には厳しい「審査」があります。近年の大型補助金(事業再構築補助金やものづくり補助金など)では半数以上の企業が不採択になるケースもあります。「補助金が受かる前提」で進めているプロジェクトは、不採択になった際に経営に深刻な影響を与えかねません。

落とし穴③ 審査から入金まで膨大な時間がかかる

申請から審査・採択・事業の実施・完了報告・実際の入金まで、半年から長ければ1年以上の期間がかかります。目の前の資金繰りには間に合わないことがほとんどです。

補助金の位置づけ 採択されたらラッキーな「プラスアルファの資金」として考える
資金調達の主軸 まず銀行融資(協調融資)をベースに確実な資金繰り計画を固める
補助金を検討する際の注意点 資金ショートを防ぐための「つなぎ融資」の確保とセットで検討する

まとめ

事業を大きく成長させるための資金調達は、補助金という不確実な手段に依存するのではなく、まずは「銀行融資(特に協調融資)」をベースに確実な資金繰り計画を固めることが重要です。補助金は「もし採択されたらプラスアルファ」という位置づけで検討し、つなぎ融資の確保とセットで考えることをお勧めします。協調融資を引き出すための事業計画書や資金繰り表の作成に不安がある場合は、財務・税務の専門家をパートナーとして活用することも有効な選択肢です。

資金繰りが悪化したときの対処法・リスケジュール(返済条件変更)の交渉術・早期相談の重要性など、実践的な銀行融資のノウハウについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。