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第2回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~「1行依存」が会社を危うくする——複数の金融機関と付き合い、プロパー融資を引き出す戦略~

前回は、銀行の担当者が稟議書を書きやすくなる「資金繰り表の作り方・見せ方」について解説しました。今回は、創業期を乗り越え事業をさらに拡大していく「創業2年目以降」の経営者が知っておくべき融資戦略、「複数の金融機関と付き合うことの重要性」についてお話しします。


ポイント① 致命的リスク「1行依存」の恐ろしさ

創業時に日本政策金融公庫や地元の銀行1行から融資を受け、そのまま1つの金融機関とだけ付き合い続けている経営者は少なくありません。しかし、事業拡大期において資金繰りを1行に依存するのは危険な状態です。

会社の命運がその1行に握られてしまうため、支店長が代わって融資方針が厳しくなったり、業績が少し悪化しただけで突然資金調達の道が絶たれてしまうリスクがあります。また、1行に依存していると金利などの融資条件の交渉においても銀行間で競争原理が働かないため、銀行側の言い値を受け入れるしかなくなります。複数の金融機関と日常的に付き合い、借入先を分散させておくことが、不測の事態に備えた「盤石な財務基盤」をつくるためのリスクヘッジになります。


ポイント② 金融機関の「特徴」を理解し、自社に合ったパートナーを選ぶ

複数の金融機関を開拓するためには、それぞれの特性を理解した上で自社の規模に合った相手を選ぶことが重要です。

メガバンク 主に大企業・中堅企業をターゲットとしており、大ロットでの融資を行う傾向があります。創業間もない小規模な企業が単独で融資を引き出すにはハードルが高いのが現実です。
地方銀行 地元の県内を中心に展開し、中堅・中小企業を主な取引先としています。一定の業績や実績が求められます。
信用金庫・信用組合 地域に密着した協同組織であり、中小企業を支援するという文化・思想を持っています。小規模な企業にも小ロットの融資を行い、関係が良好なら親身に相談に乗ってくれる心強いパートナーです。

創業2年目以降の企業が新たに取引を開拓すべきは、自社の実態に寄り添ってくれる「信用金庫・信用組合」や「地方銀行」です。


ポイント③ 「保証協会付融資」から「プロパー融資」へのステップアップ

新たに民間金融機関から融資を受ける場合、最初は「信用保証協会」が保証をつける「保証協会付融資」からスタートするのが一般的です。これは万が一企業が返済できなくなった場合に保証協会が肩代わりしてくれるため、銀行側がリスクを負わずに融資できる仕組みです。

しかし、保証協会の無担保保証枠には「原則8,000万円」という上限があります。そのため、事業をさらに拡大し続けるには、保証協会を介さず銀行が自らのリスクで直接お金を貸し出す「プロパー融資」を引き出せるようになる必要があります。保証協会付融資を通じてしっかりと返済実績を積み上げ、地域金融機関からの信用を獲得していくことが、プロパー融資へとつながる重要なステップです。

ステップ1 日本政策金融公庫の創業融資で返済実績を作る
ステップ2 信用金庫・地方銀行で保証協会付融資を受け、返済実績を積む
ステップ3 返済実績と財務内容の改善をもとに、プロパー融資へ移行する

ポイント④ 複数行取引が「稟議の突破力」を生む

複数の銀行と付き合うことは、第1回で解説した銀行員の「稟議書」を書くプロセスにおいても有効に機能します。

追加融資をお願いする際、「実はA信用金庫さんも当社の業績を評価してくれて、前向きに検討してくれていまして…」と担当者に伝えてみてください。銀行員は「優良な融資先を他行に取られるわけにはいかない」と考えます。この健全な競争原理が働くことで、担当者は上司に対して「他行に取られる前に、当行で全額融資すべきです」と、稟議を通すための強力な根拠を手に入れることができるのです。


ポイント⑤ 信用金庫との関係を深める「口座活用術」

信用金庫との信頼関係を効率的に築くための実践的なアプローチをご紹介します。日本政策金融公庫などからまとまった融資を受ける際、その振込先(着金口座)を信用金庫で新たに開設した法人口座にするという方法です。

これにより、信用金庫の担当者は自行の口座で以下の「優良な実績」を間近で確認できるようになります。

① 資金の安定性 まとまった余裕資金が着金し、残高が安定して推移している
② 返済の確実性 公庫への返済が毎月遅れなく行われている
③ 売上の実績 事業の売上が定期的に入金されている

この実績の積み重ねが、将来その信用金庫からプロパー融資を引き出す際の強力な根拠となります。単に「融資をお願いする相手」としてではなく、「自社の財務状況をリアルタイムで見てもらえるパートナー」として信用金庫と関係を築くことが、長期的な資金調達力の向上につながります。


まとめ

事業を拡大し盤石な財務基盤をつくるためには、1行依存から脱却し、地方銀行や信用金庫など「複数の金融機関」とパイプを築くことが重要です。保証協会付融資で実績を作り、最終的にはプロパー融資を引き出せる関係性を目指しましょう。どの金融機関にアプローチすべきか迷われた際は、財務・税務の専門家に相談することも有効な選択肢のひとつです。

銀行の信用を勝ち取る決算報告のタイミング・融資申請のベストタイミング・協調融資の活用法など、実践的な銀行融資のノウハウについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。