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第7回 事業計画書の書き分け方 ~融資用と補助金申請用で異なる評価ポイント~
「銀行の担当者に褒められた事業計画書を出したのに、補助金の審査には落ちてしまった……」こうした経験をお持ちの経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「同じ事業計画書なのになぜ?」と疑問に思うかもしれませんが、実は「融資」と「補助金」では、審査で評価されるポイントが全く異なります。今回は、同じ事業計画でも結果が変わってしまう理由と、それぞれの書き分けのツボを解説します。
ポイント① 「保守的」を好む融資、「革新的」を好む補助金
これが最も大きな違いです。
| 融資の目線(保守的) | 金融機関は「貸したお金が確実に返ってくるか」を最重要視します。そのため、数値計画については、楽観的な見通しよりも、最悪の事態まで想定した手堅く保守的な計画を好みます。第3回でお伝えした「読み手を前のめりにさせるビジョン」は融資でも大切ですが、それを支える数字は控えめに見積もるのが基本です。 |
| 補助金の目線(革新的) | 補助金は国や自治体の税金が原資であり、経済の活性化や波及効果が目的です。そのため、現状維持ではなく、新市場への参入や革新的なサービスの開発といった「思い切った挑戦や成長性」が評価されます。 |
ポイント② 融資は「対話」、補助金は「書面の完成度」が勝負
審査のプロセスにも大きな違いがあります。
| 融資のプロセス | 銀行員との面談があるため、もし書類の記載が不足していても、社長自身の言葉や熱意で補足説明してカバーする余地があります。 |
| 補助金のプロセス | 補助金の審査は制度によって異なりますが、基本的には外部有識者による書面審査が中心です。融資のように面談で不足を補う機会は限られるため、申請書の完成度がそのまま審査結果に直結します。公募要領に明示されている審査基準のキーワードを漏れなく盛り込み、図や表を使って視覚的にわかりやすく伝えることが重要です。 |
ポイント③ 重視される「数字」が全く違う
| 融資が重視する数字 | これまで解説してきた通り、銀行が最も見たいのは、利益と減価償却費からなる「返済財源(簡易キャッシュフロー)」です。貸したお金が確実に返ってくるかどうかを、この数字で判断します。 |
| 補助金が重視する数字 | 補助金では返済の有無よりも、制度ごとに決められた「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年率〇%以上の向上」といった特定の要件をクリアしているかどうかが絶対条件になります。なお、ここでいう「付加価値額」は補助金制度上の定義で、経営分析で使われる「付加価値(売上高から外部から購入した費用を差し引いたもの)」とは計算方法が異なります。 |
また、計画に掲げた数値は「書けば終わり」ではありません。制度によっては、採択後に賃上げなどの要件を達成できなかった場合、補助金の一部返還を求められることがあります。審査を通すために実現性の低い数字を書くと、後で自社の首を絞めることになりかねません。
ポイント④ 投資家(ベンチャーキャピタル)向けはさらに別の物差し
第1回でご紹介した投資家向けの計画書は、融資とも補助金とも評価軸が異なります。投資家は「貸したお金が返ってくるか」ではなく、「出資した会社の価値が何倍にも大きくなるか」を見ています。そのため、対象となる市場の大きさ、他社がまねしにくい強み、数年後の売上規模、そして株式公開やM&Aなどで投資家が利益を得る道筋(エグジット)が問われます。融資向けの手堅い計画をそのまま投資家に見せても「成長性が見えない」と評価されることがあるため、目的に合わせた作り分けが必要です。
まとめ
融資・補助金・出資は、どれも「誰に・何を・どうやって提供するか」というビジネスの骨格は同じですが、提出先に合わせて「手堅く(融資用)」「成長性と加点項目を前面に、ただし要件は達成可能な範囲で(補助金用)」「大きな成長シナリオを描いて(投資家用)」とチューニングを変える必要があります。
当事務所では、とくに金融機関からの融資を見据えた、手堅く現実的な事業計画書の作成と資金繰りのサポートを得意としております。ご興味のある方は、お気軽にご相談ください。
次回は、完成した事業計画書を「作って終わり」にせず、PDCAサイクルで使い倒す方法について解説します。引き続きご覧いただけますと幸いです。
※本記事は掲載時点の法令・税制・各種制度に基づいて作成しています。その後の改正や制度変更等により、記載内容が現状と異なる場合があります。個別の融資・補助金・税務のご判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
【2026年10月7日 更新】補助金の要件に関する注意点と、投資家向け計画書との違いについて、記載内容を確認し、一部修正・追記しました。

