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第1回 経営者のための決算書入門 ~なぜ経営者は決算書を読み、経営分析をすべきなのか?~

事業計画書に関する前の連載記事では、融資を引き出し会社を成長させるための「未来の数字(計画)」の作り方を解説しました。その中で、融資審査では「社長自身が会計(数字)を理解しているか」が厳しく見られるというリアルな裏側もお伝えしました。

計画という「羅針盤」を手に入れて航海へ漕ぎ出した今、次に経営者に求められるのは、過去から現在までの航海の結果を数字で確認し、自社の状態を正しく把握するスキルです。事業計画が「未来の地図」だとすれば、決算書と経営分析は「現在地を確認するGPS」と言えます。

今回から始まる連載では、経営者のための「決算書の読み方」と「経営分析の実践」について解説していきます。


ポイント① 利益を出すことは「ゴール」ではなく「前提」

「うちは毎期しっかり利益を出しているから大丈夫」と安心していませんか?もちろん、利益を獲得することは会社が存続するための大前提です。しかし、経営において「利益が出ていること」と「会社が安全であること」は必ずしもイコールではありません。

帳簿上は利益が出ていても、手元にお金が残っていなければ、ちょっとした環境の変化で資金繰りが滞り、会社は倒産してしまうリスクがあります。これがいわゆる「黒字倒産」です。売上代金の回収が遅れたり、仕入代金の支払いが先行したりすると、損益計算書では黒字なのに手元の現金が底をつく——こうした事態は、特に急成長中の会社や、取引先への入金サイトが長い業種で起こりやすいリスクです。

売上や利益といった表面的な数字だけを見て満足するのではなく、その数字の裏側にある「本当の稼ぐ力」や「お金の流れ」までを読み解く力が必要なのです。


ポイント② 経営分析は会社の「健康診断」である

決算書は、いわば会社の「健康状態を表すカルテ」です。そして、その数値を客観的に読み解く経営分析は、会社の「健康診断」そのものと言えます。

人間も、見た目は元気そうでも、血液検査をすると隠れた病気が見つかることがあります。会社も全く同じで、「なんとなく儲かっている気がする」「手元に現金があるから大丈夫だろう」といった感覚的な経営を続けていると、水面下で進行している資金繰りの悪化や資産の目減りといった「倒産の危険性」に気づくのが遅れてしまいます。

経営分析を行う最大の目的は、会社の隠れたリスクを早期に発見し、致命傷になる前に適切な対策を打つことにあります。年に1回の決算時だけでなく、定期的に自社の数字と向き合う習慣を持つことが重要です。


ポイント③ 社長自身が数字を読めるようになる最大のメリット

では、なぜ経理担当者や税理士に任せきりにするのではなく、経営者自身が決算書を読み、分析できなければならないのでしょうか。理由は大きく2つあります。

理由① 金融機関からの信頼に直結する

小規模な会社では、日々の財務管理を税理士に委ねているケースも多いですが、外部の人間が会社の実態を完全に把握するにはどうしても限界があります。そのため、金融機関は社長自身が自社の財務を理解していることを極めて重要視しています。社長が自分の言葉で自社の財務状況を客観的に語り、課題に対する改善策を示せることは、銀行からの「信用」に直結します。

理由② 次の事業計画の精度が格段に上がる

自社の現状を正しく分析できれば、「次はどこに投資すべきか」「どこを削るべきか」という未来の意思決定の精度が格段に上がります。事業計画書の連載記事でお伝えした「PDCAサイクル」を思い出してください。計画(Plan)を立て、実行(Do)し、決算書で検証(Check)し、次の計画を改善(Action)する——経営分析は、このサイクルの「C(検証)」を担う、なくてはならない工程です。


まとめ

経営分析は、過去の成績を振り返るためのものではありません。倒産リスクを未然に防ぎ、未来の正しい経営判断を下すための不可欠なプロセスです。事業計画という「未来の羅針盤」と、経営分析という「現在地を確認するGPS」の両方を持つことで、会社はより確かな方向へと進んでいけます。

財務3表の読み方・収益性分析・安全性分析など、実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。