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第2回 経営者のための経営戦略 ~「2%で借りた」は本当か?投資のハードルとなる「真の借入金利」を見抜く~
前回は、戦略会計の最大の武器である「DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法」について解説しました。将来得られる現金を「金利(利回り)」で割り引いて現在の価値に換算するという考え方です。
では、自社の投資プロジェクトを評価するための基準となる「金利」は、いったい何%に設定すればよいのでしょうか。大企業のファイナンス理論では「加重平均資本コスト(WACC)」という複雑な概念を使いますが、中小企業の現場にはもっとシンプルで強力な基準があります。それが「銀行の借入金利」です。今回はその「本当の金利」を見抜く方法を解説します。
ポイント① 投資の最低ハードルは「銀行借入金利」である
中小企業が設備投資や新規事業の資金を調達する際、その多くは銀行からの借り入れによって賄われます。仮に年利3%で借り入れた資金を使って設備投資を行った場合、その設備が3%以上の利回りを稼ぎ出してくれなければどうなるでしょうか。事業で稼いだキャッシュよりも銀行に支払う利息の方が大きくなり、正味のキャッシュフローはマイナスに転落してしまいます。
つまり、「銀行からの借入金利」こそが、その会社が投資において最低限超えなければならないハードル(資本コスト)となるのです。「この投資の利回りは、うちの借入金利を確実に上回っているか?」——経営者はこの問いをシビアな目でチェックしなければなりません。
ポイント② 罠その1——「表面金利」を信じてはいけない
「うちの借入金利は2%だから、投資のハードルも2%だな」と納得した社長、ちょっと待ってください。銀行が提示する借用書の「表面金利」をそのまま投資のハードルとして使ってはいけないケースがあります。それが「実質金利」の罠です。
ある製造業(M社)の事例でシミュレーションしてみましょう。M社の社長は生産能力拡大のために銀行から5,000万円の融資を受けました。表面金利は2%です。しかしこの融資は信用保証協会の保証付き融資であったため、保証料が年率0.8%別途発生しました。
信用保証付き融資とは、信用保証協会が融資の保証を行うことで中小企業が借り入れやすくなる制度です。しかし、保証料は表面金利とは別に発生するコストであるため、実質的な借入コストは表面金利よりも高くなります。この場合、M社の「本当の金利」は何%になるでしょうか。
| 実際に支払うコスト | 利息(5,000万円 × 2%)+ 保証料(5,000万円 × 0.8%)= 140万円 |
| 実質金利 | 140万円 ÷ 5,000万円 = 2.8% |
社長は表面上「2%」で借りたつもりが、保証料を含めると実質「2.8%」のコストを負担していることになります。「2%の利回りが出れば十分だ」と甘く見て投資を決断してしまうと、この0.8%のコスト差がボディブローのように資金繰りを圧迫することになるのです。
ポイント③ 罠その2——「節税効果」が金利を押し下げる
「実質金利を計算したら投資のハードルが上がってしまった……」と落胆するのは早計です。ここで、もう一つの重要な要素「税金」が絡んできます。実は法人税の存在が、実質的な借入金利を押し下げてくれるのです。
会社が銀行に支払う「支払利息」や信用保証協会に支払う「保証料」は、損益計算書上では費用として計上されます。費用が増えれば税引き前利益が減り、結果として法人税が安くなります。借金をしてコストを払うことで税金が安くなる——これを「節税効果(タックス・シールド)」と呼びます。
M社の実効税率が30%だったとします。利息・保証料が費用になることで、その負担分の30%が税金として「戻ってくる」のと同じ効果が得られます。投資のハードルとなる真の金利は、実質金利からこの節税効果分を差し引いた「税引後実質金利」で計算しなければなりません。
| 税引後実質金利 | 実質金利 2.8% × (1 - 実効税率 30%) = 1.96% |
保証料によって「2.8%」に跳ね上がっていた投資のハードルが、節税効果を加味することで最終的に「1.96%」まで下がりました。DCF法で未来のキャッシュを現在価値に割り引く際には、この「税引後実質金利」こそが社長が採用すべき「真の割引率」となるのです。
まとめ
「うちの投資ハードルは何%か?」という問いに対して、経営者は借用書の表面金利を鵜呑みにしてはいけません。信用保証料による実質金利の上昇、そして利息・保証料による節税効果——この2つの要素を計算に組み込んで初めて、正しい「割引率」が導き出せます。
減価償却費が生み出すタックス・シールドの仕組み・NPVによる設備投資の判断基準など、戦略会計を実践するための具体的な手法について、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。

