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第2回 「お金が出ていかない」賢い節税の実践テクニック

節税の本来の目的は「手元に資金を残すこと」であり、保険加入や不要な備品購入といった「お金が出ていく節税」はかえって資金繰りを悪化させるリスクがあります。

では、無駄なお金を使わずに税金を減らし、手元に資金を残す方法はあるのでしょうか。今回は、法人の強みを活かした「お金が出ていかない賢い節税テクニック」の代表例と、「お金は一時的に出ていくが全額貯金として残る最強の例外」、そして「必要な設備投資の資金効率を最大化する手法」をご紹介します。


ポイント① 非課税で手当を受け取る「出張旅費規程」の活用

社長が自分自身にお金を払う場合、通常は「役員報酬(給料)」として支払いますが、給料には所得税・住民税・社会保険料がかかってしまいます。

そこで有効なのが「出張旅費規程」の活用です。出張旅費規程とは、会社のために出張をした際、交通費や宿泊費の実費とは別に「出張手当(日当)」を支給する社内ルールのことです。

この出張手当の最大の魅力は、「会社側では経費(損金)として計上でき利益を圧縮できる」と同時に、「受け取る個人側(社長)にとっては非課税となり、税金も社会保険料もかからずそのまま手元に残る」という点です。会社のお金を効率的に社長個人の手元に移すことができる、活用を検討する価値のある手法と言えます。ただし、後述の【重要】でお伝えする通り、導入に際しては必ず専門家にご相談ください。


ポイント② 役員報酬の最適化と「家族への所得分散」

日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、個人の所得が高くなるほど適用される税率が上がります。そこで検討したいのが「家族への所得分散」です。

実際に会社の業務を手伝っている配偶者や親族がいる場合、社長1人に集中している役員報酬を、その業務実態に応じて家族に分散して支給します。こうすることで一人当たりの所得が下がり低い税率が適用されるため、世帯全体での税金・社会保険料の負担を抑え、手元に多くのお金を残すことができます。


ポイント③ 必要な投資の資金効率を上げる「少額減価償却資産の特例」

第1回で「税金を減らすための不要な備品購入はNG」とお伝えしましたが、本当に事業に必要な設備投資であれば話は別です。中小企業には、一定金額未満の資産(パソコン・ソフトウェア・工具など)を購入した場合、その全額をその年度の経費として即時に計上できる特例があります(年間合計300万円まで)。

通常、資産は耐用年数に応じて数年かけて減価償却しますが、この特例を使えば購入年度に一括で経費化でき、その分だけ利益を圧縮して税金を減らすことができます。「どうせ買うものを賢いタイミングで購入する」という、資金効率の高い節税手法です。

なお、令和8年度税制改正により、対象となる資産の取得価額の上限が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられております(令和8年4月1日以後に取得する資産から適用)。近年の物価上昇や設備価格の高騰を踏まえた改正であり、対象となる資産の範囲が広がることで、中小企業にとってより使いやすい制度になります。購入を検討している設備がある場合は、計画的に導入することをお勧めします。


ポイント④ 全額経費になる最強の貯金「経営セーフティ共済」

第1回で「お金が出ていく節税は危険だ」とお伝えしましたが、一つだけ例外としておすすめできるものがあります。それが、国(中小機構)が運営する「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」です。

「貯蓄型の生命保険でも手元資金を作れるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし保険は、解約のタイミングによって支払った保険料より戻ってくる金額が少なくなる「元本割れ」のリスクが伴います。また、解約返戻金を受け取った際には会社の益金(収益)として計上されるため、出口で役員退職金などの損金をぶつけない限り、結局その時点で税金がかかってしまいます。さらに2019年の税制改正以降、かつてのような節税効果は極めて限定的になっています。

一方で、経営セーフティ共済の最大の魅力は、掛金(月額最大20万円、年間240万円まで)を全額経費(損金)として計上できるにもかかわらず、40カ月以上掛け続ければ自己都合で解約しても掛金が100%全額戻ってくるという点です。元本割れのリスクなく、実質的な「全額経費になる貯金」として安全に資金をストックできます。決算月に1年分(最大240万円)を前払いすることも可能なため、突発的な利益が出た際の特効薬にもなります。

さらに、万が一取引先が倒産した際には、無担保・無保証人で掛金の10倍(最高8,000万円)まで借入ができるため、いざという時の資金繰りの防波堤としても機能します。


ポイント⑤ 経営セーフティ共済の解約と「役員退職金」の合わせ技

役員退職金は、適正な金額であれば全額を法人の損金(経費)に算入できるうえ、受け取る役員側にとっても「退職所得」として税負担が極めて軽くなる、法人節税の強力な手法のひとつです。

さらに効果を高めるのが、経営セーフティ共済の解約と組み合わせる手法です。共済を解約すると掛金が全額戻ってきますが、この解約返戻金は法人の「益金(収益)」として計上されます。そのまま申告すると大きな利益が発生し、多額の税金がかかってしまいます。

そこで、解約のタイミングを役員退職金の支給時期に合わせることで、解約返戻金(益金)と役員退職金(損金)が相殺され、大幅な節税効果が生まれます。長年積み立ててきた共済を「退職金の原資」として戦略的に活用できる、非常に合理的な手法です。

ただし、役員退職金は「不相当に高額」と税務署に判断された場合、超過部分が損金否認されるリスクがあります。適正額の計算(功績倍率法など)や支給時期の設計は、必ず事前に専門家へご相談ください。


ポイント⑥ 掛金が全額所得控除になる「小規模企業共済」

個人事業主や中小企業の経営者が加入できる退職金積立制度が「小規模企業共済」です。国(中小機構)が運営する公的な制度で、経営セーフティ共済と並ぶ「手元資金を残しながら節税できる」代表的な手法です。

掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で設定でき、年間最大84万円が全額所得控除の対象となります。法人の経費にはなりませんが、社長個人の所得税・住民税を直接減らす効果があります。

受け取り時は退職所得または公的年金等控除が適用されるため、将来の受取時の税負担も軽くなります。経営セーフティ共済と合わせて加入することで、法人・個人の両面から節税と老後の資金準備を同時に進められる点が最大の魅力です。


【重要】導入の際は、必ず専門家に相談を

今回ご紹介した「出張旅費規程」や「所得分散」は、手元に資金を残す効果的な手法ですが、自己判断での導入は非常に危険です。

これらは税務調査において厳しくチェックされやすいテーマです。社会通念上の常識を超えた手当の設定、出張の業務実態が証明できないケース、家族に業務の実態がないのに給与を支払うケースなどは、税務署から否認され重いペナルティを受ける可能性があります。また、役員退職金の「適正額の算定」や、少額減価償却資産の特例の「適用要件」なども、非常に専門的な判断が求められます。導入を検討される際は、必ず顧問税理士などの専門家に相談し、税務リスクをクリアした合法かつ安全な仕組みを設計してください。


まとめ

法人の仕組みや公的な共済制度を正しく使いこなせば、無駄なお金を使わずに会社と個人の手元資金を増やすことができます。ただし、どの手法も「正しい運用」があってこその節税です。当事務所でも、税務リスクをしっかり管理したうえで、資金を残すためのルール作りをサポートしております。

節税と融資の関係、法人化のメリットなど、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。