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第4回 経営者のための節税と資金繰り ~個人と法人の大きな違い——法人化で節税効果を高める方法~
これから起業を考えている方や、現在個人事業主として活動している方が、効率的にお金を手元に残しながら事業を拡大していくためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、「個人事業主」と「法人(会社)」の大きな違いと、法人化による節税メリットについて解説します(信用力や資金調達、設立の手続きといった観点からの比較は、起業ガイド第1回で詳しく解説しています)。
ポイント① 個人と法人では「経費」の考え方が大きく違う
個人事業主と法人では、経費として認められる範囲が大きく異なります。
個人事業主の場合、「事業用の支出」と「私生活用の支出」が混ざりやすいため、事業に直接関連している部分のみを「家事按分」として計算しなければ経費として認められません。一方で法人には、個人のような「家事按分」という考え方がなく、事業のために使ったという明確な理由(事業関連性)を説明できる支出は、原則として法人の経費になります。ただし、役員個人のための支出は役員給与とみなされて経費にならないほか、交際費には経費にできる上限があるなど、法人ならではのルールもあります。
そのうえで、個人では経費として認められにくかった支出を経費化できる可能性が広がるのは、法人の大きな特徴です。第2回でご紹介した「出張旅費規程」なども、この法人ならではの強みを活かした仕組みです。
ポイント② 法人ならではの大きなメリット「給与所得控除」
個人と法人の最も大きな違いのひとつが、社長自身への「給料」の扱いです。
個人事業主の場合、事業で稼いだ利益はすべて「個人の所得」となり、自分自身に給料を支払って経費にすることはできません。しかし法人であれば、会社から社長(自分)へ「役員報酬」として給料を支払うことができます。役員報酬は会社の経費(損金)になるだけでなく、受け取る個人側でも「給与所得控除」という強力な非課税枠が適用されます。
これにより、事業の利益を「会社の利益」と「個人の給与」に分散させることができ、個人事業主のままでいるよりも税金の負担を大きく減らせる可能性があります。一方で、法人は社長1人でも健康保険・厚生年金への加入が義務で、会社負担分を含めた社会保険料は、国民健康保険・国民年金より増えることが多くあります。法人化を検討する際は、税金と社会保険料を合わせたトータルで比較することが欠かせません。
ポイント③ 赤字の際のメリット「繰越欠損金」と、無視できないデメリット「均等割」
法人化のメリットは、利益が出ている時だけではありません。事業が赤字になった場合にも、法人には「繰越欠損金」という強力な制度があります。
個人事業主(青色申告)の場合、赤字を翌年以降に繰り越せる期間は「3年間」ですが、法人であれば「10年間」も繰り越すことができます。創業期などの赤字を長期にわたってストックしておき、将来大きな利益が出た際に相殺することで、税金を大幅に節約できます。
【注意】赤字でも発生する「均等割」の負担
ただし、「赤字が繰り越せるから、とりあえず法人化しよう」と安易に考えるのは危険です。法人の場合、たとえ赤字であっても、法人住民税の「均等割」として毎年最低でも約7万円の税金を支払う義務があります。事業を継続する強い意志がなく、売上も安定していない状況でむやみに法人化すると、コストと手間がかかるだけでなく、この均等割の負担が重くのしかかってしまいます。
ポイント④ 法人化を検討すべき「正しいタイミング」とは
日本の所得税は所得が高くなるほど税率が上がる累進課税制度のため、利益が増えるほど法人税のほうが有利になります。法人化を検討する目安として、以下のタイミングがよく挙げられます。
| 年商の目安 | 1,000万円を超えてきたとき(個人で消費税の課税事業者になる前後に法人化すると、法人として改めて消費税の免税期間を得られる場合があるため。ただし、インボイス登録をしている場合などは除きます) |
| 利益(所得)の目安 | 500万円〜800万円になってきたとき |
ただし、これらはあくまで目安です。今後の事業計画や投資の予定、社会保険の加入義務など、メリット・デメリットを正しく理解したうえで自社に最適な選択をすることが重要です。最適なタイミングを見極めるためにも、ぜひ専門家である税理士にご相談ください。
まとめ
法人という「器」を正しく使うことで、個人事業主のままでは得られない多くの節税メリットや資金繰りの選択肢を手に入れることができます。ただし、維持コストや社会保険の加入義務・均等割などのデメリットも正しく理解した上で、自社に最適な選択をすることが重要です。
目指すべきキャッシュリッチ企業の姿・税理士を財務のパートナーとして活用する方法など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
※本記事は掲載時点の法令・税制に基づいて作成しています。その後の税制改正等により、記載内容が現状と異なる場合があります。個別の税務判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。
【2026年10月7日 更新】法人の経費の範囲と、法人化による社会保険料の負担について、記載内容を確認し、一部修正しました。

