お知らせ NEWS
-

第2回 経営者のための会計入門 ~財務会計を経営に活かす——月次決算の着地点は「スピード」~
年1回の決算書を税務申告のためだけに使っている経営者は少なくありません。しかし、会計が経営の羅針盤であるならば、それを1年に1回しか見ないというのは、目隠しをして航海しているのと同じです。1年分の数字をまとめて見て「今年は赤字だった」「資金が足りない」と気づいても、軌道修正できるタイミングを逃してしまうリスクがあります。 今回は、財務会計のデータを経営に活かすための第一歩として、「月次決算」の目的と実践について解説します。 ポイント① 月次決算の本当の目的は「異常値の早期発見」 月次決算の最大の目的は、単に毎月の数字を正しく集計することではありません。真の目的は、「実績と計画のズレ(異常値)を早期に発見し、次の一手を打つこと」にあります。 経営はPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回すことですが、月次決算はその「C(評価)」の要となります。月次で数字を確認することで、問題が小さいうちに手を打てる体制が整います。 ポイント② 月次決算の着地点は「正確性よりスピード」 月次決算において重要なのは、「正確性よりもスピード」です。1円単位の正確さを求めて翌月末まで数字が出ないよりも、多少の見積もりを含んででも「翌月の10日」には大まかな業績を把握し、異常値があればすぐに対策を打てる状態にすることの方がはるかに重要です。 経営の異常値を早期に発見し次の一手を打つためには、多少の正確性を犠牲にしてでも早く数字を締める習慣が必要なのです。 ポイント③ 「どんぶり勘定」からの脱却——部門別・製品別の可視化 スピーディーな月次決算であっても、全社の原価を売上高の比率などで大雑把に割り振るような「どんぶり勘定」では意味が半減します。会社全体の利益はわかっても、「どの製品・どの部門が儲かっているのか、あるいは足を引っ張っているのか」という実態がブラックボックス化してしまうからです。 部門別・製品別の実態を迅速に可視化し、異常値を特定できる月次決算があって初めて、資金繰り管理や業績管理といった管理会計の歯車が回り始めます。 まとめ 月次決算は「毎月数字を集計する作業」ではなく、経営のPDCAを回すための「評価」の仕組みです。スピードと部門別の可視化を意識した月次決算を習慣化することで、会社の現状把握と意思決定のスピードが格段に上がります。 資金繰り表の読み方・KPI管理・戦略会計の実践など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

第1回 経営者のための会計入門 ~財務会計・管理会計・戦略会計、3つの違いとは?~
自社の会計や決算を「税理士に申告を任せているだけ」になっていませんか?「数字は苦手だから」「専門家に任せておけば安心だから」と考える方も多いかもしれません。しかし、事業計画を立て、会社を成長させたいと考える経営者にとって、「会計リテラシー」を身につけることは、自社の経営をコントロールするための強力な武器となります。 今回から始まる新連載では、経営に役立つ会計を「財務会計」「管理会計」「戦略会計」の3つに分け、それぞれの役割と実践的な活用法を解説していきます。まずは3つの会計の決定的な違いを整理しましょう。 ポイント① なぜ経営者が会計を知る必要があるのか——「アカウンタビリティ」の真意 そもそも、なぜ会計が必要なのでしょうか。会計の重要な目的のひとつに「アカウンタビリティ(説明責任)」があります。これは単に「聞かれたら報告すればいい」という受動的なものではありません。 ビジネスの世界において、他人の資本(お金)を預かって事業を行う以上、「損失を被る可能性がある投資家や債権者に対して、自らの仕事ぶりを説明し、合理的に納得させて安心させる」という能動的な責任が生じます。会計は、経営者がこの責任を果たすための「世界の共通言語」なのです。つまり、会社において重要な仕事を「任される人」であり続けるためには、会計を学ぶことが不可欠です。 ポイント② ルールに従い過去を記録する「財務会計(制度会計)」 財務会計は、株主・銀行・税務署などの外部の利害関係者に向けて、過去の業績を示す決算書を作成するための会計です。会社法や税法などの厳格な法制度に従うため「制度会計」とも呼ばれます。なお、税金を正しく計算するための「税務会計」もこの制度会計の一部に位置づけられます。 ただし、画一的なルールに従うがゆえの限界もあります。制度会計の数字だけを見ていても、経営の真の姿や資金繰りのリスクを見誤る可能性があります。だからこそ、経営の実態を映し出す管理会計の視点が不可欠なのです。 ポイント③ 自由にルールを作り、現在と未来を管理する「管理会計」 管理会計は、企業内部で活用するための会計です。外部へ見せるものではないため、法的な縛りはなく、経営の実態に合わせて自由にカスタマイズして使えるのが最大の強みです。 管理会計は独自に別の帳簿をつけるわけではなく、財務会計で蓄積されたデータをベースに、経営判断に役立つ形に加工・再集計して活用します。たとえば、財務会計では「売上高1,000万円」という数字しかわかりませんが、管理会計では同じデータを使って商品別・部門別・エリア別に分解して分析することができます。 財務会計が「現在の正確な位置(座標)」を示す羅針盤だとすれば、管理会計は「これから船をどちらへ進めるか」を決めるための未来志向のツールと言えます。 ポイント④ 時間概念を取り入れ、中長期の未来を見据える「戦略会計」 管理会計をさらに中長期的な視点へと発展させたのが「戦略会計」です。管理会計が主に1年以内の業績管理(予算管理や日常的なコスト管理)を扱うのに対し、戦略会計は3〜10年先を見据え、設備投資・新規事業参入・事業撤退・M&Aといった企業の基本構造を左右する意思決定をサポートします。 ここでは「時間(将来の現金の価値)」の概念を取り入れることが最大の特徴です。何年も先のキャッシュフローを現在価値に割り引いて考えることで、投資の採算を厳密に判定します。 まとめ 財務会計はルールに従って過去を記録し外部へ説明責任を果たすもの。管理会計や戦略会計は、未来の意思決定のために経営者が自由にカスタマイズして使う「経営の武器」です。 月次決算の活用法・資金繰り表の読み方・KPIを使った業績管理・戦略会計の実践など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

最終回 目指すべきは「キャッシュリッチ企業」 ~税理士を財務のパートナーとして活用する~
節税の本来の目的は「手元に資金を残すこと」であり、お金が出ていく過度な節税は資金繰りを悪化させるリスクがあること、そして目先の節税が銀行からの融資枠(借入余力)を奪ってしまうジレンマについてお伝えしてきました。 最終回となる今回は、これまでの内容を踏まえ、会社を強くするための「経営の好循環」の作り方と、税理士の正しい活用法について解説します。 ポイント① 節税は事業拡大のための「投資原資」を作る手段 「真の節税」とは、単に支払う税金を減らすことではありません。事業の収益性を高め、結果として会社の手元に残るお金(キャッシュ)を最大化することです。手元に残ったお金は、会社を守る防衛資金になるだけでなく、次の事業拡大に向けた「投資の原資」となります。 成長を続ける強い会社は、例外なく以下のような「経営の好循環」を持っています。 ① 利益を出す 本業でしっかり稼ぐ ② 適正に納税する 無駄な節税で利益や現金を減らさない ③ 融資を受ける 利益を出しているため銀行の評価が高く、好条件で多額の資金を調達できる ④ 事業に投資する 潤沢な資金を人材・設備・マーケティングに投資する ⑤ さらに大きな利益を生み出す ①に戻り、サイクルが回り続ける この好循環を回し続け、手元に潤沢な資金を持つ「キャッシュリッチ企業」を目指すことが、どんな不況や環境変化にも負けない会社を作るための有効なアプローチです。 ポイント② 税理士を「節税の道具」にしてはいけない 利益が出始めると、「とにかく税金を安くしてほしい」と税理士に過度な節税策ばかりを求める経営者が少なくありません。しかし、税理士を単なる「税金を減らすための道具」として使ってしまうのは、会社にとって非常に大きな機会損失です。 国家資格を持つ税理士であっても、すべての税務や経営課題に万能なわけではありません。過去の数字を正確に処理する「日々の会計・申告作業」が得意な税理士もいれば、個人の「相続税」に特化した税理士や、会社の未来を見据えた「資金繰りや銀行融資、経営計画の策定」を強みとする税理士などがいます。 もしあなたの会社が事業の成長と資金繰りの安定を望むのであれば、「これなら税金が減りますよ」と目先の節税テクニックばかりを提案してくる専門家ではなく、数年先の会社の状態を見据えてアドバイスをしてくれる専門家を選ぶ必要があります。 ポイント③ 「財務のパートナー」としての税理士活用法 会社を成長させるためには、過去の数字をまとめる「財務会計(税務申告のための会計)」だけでなく、自社のお金の動きを把握し未来の計画を立てる「管理会計(経営のための会計)」の視点が不可欠です。 今、手元にいくら現金があるのか。次の設備投資や採用のタイミングはいつが適切か。銀行からどのように見られており、いくらまでなら借りられるか——こうした「経営の意思決定」に関わるお金の悩みを気軽に相談できる相手は、社内にはなかなかいません。 だからこそ、経営計画書の作成や資金繰りのシミュレーションを一緒に行い、社長の壁打ち相手になれる「財務のパートナー」として税理士を活用していただきたいのです。 まとめ 当事務所のブログでは、「事業計画書の作り方」「決算書と経営分析」「節税と資金繰り」と、一貫して「数字に強い経営」をテーマに情報発信を行ってまいりました。これらの記事が、会社をより良くしたいと願う経営者の皆様にとって、少しでも経営のヒントや気づきになれば幸いです。 当事務所では、適正な納税による社会的信用の獲得と、銀行融資を最大限に活用した資金繰り支援を通じて、地域の企業の成長を全力でサポートしております。自社の財務や資金繰りについて「一度しっかり専門家に見てほしい」とお考えの際は、どうぞお気軽にご相談ください。 ※本記事は掲載時点の法令・税制に基づいて作成しています。その後の税制改正等により、記載内容が現状と異なる場合があります。個別の税務判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。 【参考文献】本連載の執筆にあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。 ・『ひとり社長の賢い節税』(杉田健吾 著/明日香出版社) ・『顧問先の銀行融資支援スキル実装ハンドブック』(諸留誕 著/日本法令) ・『激レア 資金繰りテクニック50』(菅原由一/幻冬舎)
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

第4回 個人と法人の決定的な違い ~法人化で節税効果を最大化する方法~
これから起業を考えている方や、現在個人事業主として活動している方が、効率的にお金を手元に残しながら事業を拡大していくためには、どうすればよいのでしょうか。今回は、「個人事業主」と「法人(会社)」の決定的な違いと、法人化による節税メリットについて解説します。 ポイント① 個人と法人では「経費」の考え方が大きく違う 個人事業主と法人では、経費として認められる範囲が大きく異なります。 個人事業主の場合、「事業用の支出」と「私生活用の支出」が混ざりやすいため、事業に直接関連している部分のみを「家事按分」として計算しなければ経費として認められません。一方で法人には、法律上「私生活」という概念がありません。法人が使ったお金は、事業のために使ったという明確な理由(事業関連性)を説明できれば、原則としてすべて経費になります。 つまり、法人になるだけで個人では経費として認められにくかった支出を経費化できる可能性が大きく広がり、利益を圧縮しやすくなります。第2回でご紹介した「出張旅費規程」なども、この法人ならではの強みを活かした仕組みです。 ポイント② 法人ならではの絶大なメリット「給与所得控除」 個人と法人の最も大きな違いのひとつが、社長自身への「給料」の扱いです。 個人事業主の場合、事業で稼いだ利益はすべて「個人の所得」となり、自分自身に給料を支払って経費にすることはできません。しかし法人であれば、会社から社長(自分)へ「役員報酬」として給料を支払うことができます。役員報酬は会社の経費(損金)になるだけでなく、受け取る個人側でも「給与所得控除」という強力な非課税枠が適用されます。 これにより、事業の利益を「会社の利益」と「個人の給与」に分散させることができ、個人事業主のままでいるよりも世帯全体で支払う税金や社会保険料の負担を大幅に減らすことが可能になります。 ポイント③ 赤字の際のメリット「繰越欠損金」と、無視できないデメリット「均等割」 法人化のメリットは、利益が出ている時だけではありません。事業が赤字になった場合にも、法人には「繰越欠損金」という強力な制度があります。 個人事業主(青色申告)の場合、赤字を翌年以降に繰り越せる期間は「3年間」ですが、法人であれば「10年間」も繰り越すことができます。創業期などの赤字を長期にわたってストックしておき、将来大きな利益が出た際に相殺することで、税金を大幅に節約できます。 【注意】赤字でも発生する「均等割」の負担 ただし、「赤字が繰り越せるから、とりあえず法人化しよう」と安易に考えるのは危険です。法人の場合、たとえ赤字であっても、法人住民税の「均等割」として毎年最低でも約7万円の税金を支払う義務があります。事業を継続する強い意志がなく、売上も安定していない状況でむやみに法人化すると、コストと手間がかかるだけでなく、この均等割の負担が重くのしかかってしまいます。 ポイント④ 法人化を検討すべき「正しいタイミング」とは 日本の所得税は所得が高くなるほど税率が上がる累進課税制度のため、利益が増えるほど法人税のほうが有利になります。法人化を検討する目安として、以下のタイミングがよく挙げられます。 年商の目安 800万円〜1,000万円を超えてきたとき 利益(所得)の目安 500万円〜800万円になってきたとき ただし、これらはあくまで目安です。今後の事業計画や投資の予定、社会保険の加入義務など、メリット・デメリットを正しく理解したうえで自社に最適な選択をすることが重要です。最適なタイミングを見極めるためにも、ぜひ専門家である税理士にご相談ください。 まとめ 法人という「器」を正しく使うことで、個人事業主のままでは得られない多くの節税メリットや資金繰りの選択肢を手に入れることができます。ただし、維持コストや社会保険の加入義務・均等割などのデメリットも正しく理解した上で、自社に最適な選択をすることが重要です。 目指すべきキャッシュリッチ企業の姿・税理士を財務のパートナーとして活用する方法など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

第3回 節税と融資のジレンマ ~目先の節税が融資枠(借入余力)を奪う~
賢い節税テクニックをご紹介してきましたが、節税には経営者が陥りやすい「もう一つの大きな落とし穴」が存在します。それが「融資(資金調達)への悪影響」です。 目先の税金を減らすことに夢中になるあまり、いざ事業を拡大したい時や不測の事態で資金が必要になった時に「銀行からお金が借りられない」と頭を抱える経営者は少なくありません。今回は、節税と融資の間に潜むジレンマについて解説します。 ポイント① 銀行は決算書の「どこ」を見て融資額を決めるのか 銀行が「この会社にはいくらまでならお金を貸せるか」という上限額(借入余力)を判断する際、最も重視する指標のひとつが「簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)」と、そこから導き出される「債務償還年数」です。 銀行は安全に融資を行う目安として、「借入金の残高が、年間で生み出すキャッシュフローの10倍以内(=10年で返済できる範囲内)」であることをひとつの基準としています。これを借入余力の計算式に直すと、以下のようになります。 借入余力 =(簡易キャッシュフロー × 10)- 現在の借入金残高 つまり、会社が「新たに借りられるお金の上限」は、利益の10倍から現在の借金を引いた額になるということです。 ポイント② 衝撃の事実——90万円の節税で、2,100万円の「新たな融資枠」が消える では、税金を減らすために利益を圧縮した場合、融資枠にどのような影響が出るのでしょうか。具体的な数字で検証してみましょう。 (※わかりやすくするため、実効税率を30%、減価償却費は考慮しないものとして計算します。また、すでに銀行から「3,000万円の借入」がある会社と想定します) 決算直前、あなたの会社に「1,000万円の税引前利益」が出そうだとします。 ケースA:節税せずそのまま申告 ケースB:300万円の経費で節税 税引前利益 1,000万円 700万円(1,000万円-経費300万円) 税金(30%) 300万円 210万円(★Aより90万円の節税) 税引後利益(簡易CF) 700万円 490万円 借入上限の目安(利益の10倍) 7,000万円 4,900万円 新たな借入余力(上限-既存借入3,000万円) 4,000万円 1,900万円 ケースBでは確かに税金を90万円減らすことに成功しました。しかし利益が減ったことにより、銀行から新たに借りられる枠(借入余力)は4,000万円から1,900万円へと大きく下がっています。「90万円の節税をした代償として、2,100万円分の新たな融資枠を失うリスクがある」ということを、ぜひ頭に入れておいてください。 ※なお、実際の借入余力は業種・減価償却費の額・担保や保証の有無などによっても変動するため、一概に「利益の10倍」とはなりません。上記はあくまで「節税が融資枠に与えるインパクト」を示すための概算です。 ポイント③ 税金を払って利益を出したほうが、資金繰りは圧倒的に安定する もちろん、実際の銀行の融資判断は決算書の数字だけで決まるわけではなく、事業の将来性なども総合的に判断されます。しかし「利益の額」が極めて大きなウエイトを占めているのは紛れもない事実です。 会社が持続的に成長するための「投資資金」や、不測の事態を乗り越えるための「防衛資金」は、銀行からの融資によって確保するのが一般的です。「税金を払いたくないから」という理由だけで無理な節税を行い利益を削り続けていると、いざという時に資金調達ができず会社の首を絞めることになります。 適正に利益を出し、堂々と税金を払い、銀行からの高い評価(多額の融資枠)を得て手元に潤沢な資金を持っておくこと——それこそが、どんな環境の変化にも負けない強い会社をつくる最大の秘訣です。 まとめ 「節税」と「融資(借入余力)」はトレードオフの関係にあります。過度な節税は、会社の成長エンジンである「資金調達力」を奪ってしまいます。決算対策を行う際は、目先の税額だけでなく「自社の借入余力にどう影響するか」までをシミュレーションする視点が不可欠です。 法人化のメリット・デメリット、目指すべきキャッシュリッチ企業の姿など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

第2回 「お金が出ていかない」賢い節税の実践テクニック
節税の本来の目的は「手元に資金を残すこと」であり、保険加入や不要な備品購入といった「お金が出ていく節税」はかえって資金繰りを悪化させるリスクがあります。 では、無駄なお金を使わずに税金を減らし、手元に資金を残す方法はあるのでしょうか。今回は、法人の強みを活かした「お金が出ていかない賢い節税テクニック」の代表例と、「お金は一時的に出ていくが全額貯金として残る最強の例外」、そして「必要な設備投資の資金効率を最大化する手法」をご紹介します。 ポイント① 非課税で手当を受け取る「出張旅費規程」の活用 社長が自分自身にお金を払う場合、通常は「役員報酬(給料)」として支払いますが、給料には所得税・住民税・社会保険料がかかってしまいます。 そこで有効なのが「出張旅費規程」の活用です。出張旅費規程とは、会社のために出張をした際、交通費や宿泊費の実費とは別に「出張手当(日当)」を支給する社内ルールのことです。 この出張手当の最大の魅力は、「会社側では経費(損金)として計上でき利益を圧縮できる」と同時に、「受け取る個人側(社長)にとっては非課税となり、税金も社会保険料もかからずそのまま手元に残る」という点です。会社のお金を効率的に社長個人の手元に移すことができる、活用を検討する価値のある手法と言えます。ただし、後述の【重要】でお伝えする通り、導入に際しては必ず専門家にご相談ください。 ポイント② 役員報酬の最適化と「家族への所得分散」 日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、個人の所得が高くなるほど適用される税率が上がります。そこで検討したいのが「家族への所得分散」です。 実際に会社の業務を手伝っている配偶者や親族がいる場合、社長1人に集中している役員報酬を、その業務実態に応じて家族に分散して支給します。こうすることで一人当たりの所得が下がり低い税率が適用されるため、世帯全体での税金・社会保険料の負担を抑え、手元に多くのお金を残すことができます。 ポイント③ 必要な投資の資金効率を上げる「少額減価償却資産の特例」 第1回で「税金を減らすための不要な備品購入はNG」とお伝えしましたが、本当に事業に必要な設備投資であれば話は別です。中小企業には、一定金額未満の資産(パソコン・ソフトウェア・工具など)を購入した場合、その全額をその年度の経費として即時に計上できる特例があります(年間合計300万円まで)。 通常、資産は耐用年数に応じて数年かけて減価償却しますが、この特例を使えば購入年度に一括で経費化でき、その分だけ利益を圧縮して税金を減らすことができます。「どうせ買うものを賢いタイミングで購入する」という、資金効率の高い節税手法です。 なお、令和8年度税制改正により、対象となる資産の取得価額の上限が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられております(令和8年4月1日以後に取得する資産から適用)。近年の物価上昇や設備価格の高騰を踏まえた改正であり、対象となる資産の範囲が広がることで、中小企業にとってより使いやすい制度になります。購入を検討している設備がある場合は、計画的に導入することをお勧めします。 ポイント④ 全額経費になる最強の貯金「経営セーフティ共済」 第1回で「お金が出ていく節税は危険だ」とお伝えしましたが、一つだけ例外としておすすめできるものがあります。それが、国(中小機構)が運営する「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」です。 「貯蓄型の生命保険でも手元資金を作れるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし保険は、解約のタイミングによって支払った保険料より戻ってくる金額が少なくなる「元本割れ」のリスクが伴います。また、解約返戻金を受け取った際には会社の益金(収益)として計上されるため、出口で役員退職金などの損金をぶつけない限り、結局その時点で税金がかかってしまいます。さらに2019年の税制改正以降、かつてのような節税効果は極めて限定的になっています。 一方で、経営セーフティ共済の最大の魅力は、掛金(月額最大20万円、年間240万円まで)を全額経費(損金)として計上できるにもかかわらず、40カ月以上掛け続ければ自己都合で解約しても掛金が100%全額戻ってくるという点です。元本割れのリスクなく、実質的な「全額経費になる貯金」として安全に資金をストックできます。決算月に1年分(最大240万円)を前払いすることも可能なため、突発的な利益が出た際の特効薬にもなります。 さらに、万が一取引先が倒産した際には、無担保・無保証人で掛金の10倍(最高8,000万円)まで借入ができるため、いざという時の資金繰りの防波堤としても機能します。 ポイント⑤ 経営セーフティ共済の解約と「役員退職金」の合わせ技 役員退職金は、適正な金額であれば全額を法人の損金(経費)に算入できるうえ、受け取る役員側にとっても「退職所得」として税負担が極めて軽くなる、法人節税の強力な手法のひとつです。 さらに効果を高めるのが、経営セーフティ共済の解約と組み合わせる手法です。共済を解約すると掛金が全額戻ってきますが、この解約返戻金は法人の「益金(収益)」として計上されます。そのまま申告すると大きな利益が発生し、多額の税金がかかってしまいます。 そこで、解約のタイミングを役員退職金の支給時期に合わせることで、解約返戻金(益金)と役員退職金(損金)が相殺され、大幅な節税効果が生まれます。長年積み立ててきた共済を「退職金の原資」として戦略的に活用できる、非常に合理的な手法です。 ただし、役員退職金は「不相当に高額」と税務署に判断された場合、超過部分が損金否認されるリスクがあります。適正額の計算(功績倍率法など)や支給時期の設計は、必ず事前に専門家へご相談ください。 ポイント⑥ 掛金が全額所得控除になる「小規模企業共済」 個人事業主や中小企業の経営者が加入できる退職金積立制度が「小規模企業共済」です。国(中小機構)が運営する公的な制度で、経営セーフティ共済と並ぶ「手元資金を残しながら節税できる」代表的な手法です。 掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で設定でき、年間最大84万円が全額所得控除の対象となります。法人の経費にはなりませんが、社長個人の所得税・住民税を直接減らす効果があります。 受け取り時は退職所得または公的年金等控除が適用されるため、将来の受取時の税負担も軽くなります。経営セーフティ共済と合わせて加入することで、法人・個人の両面から節税と老後の資金準備を同時に進められる点が最大の魅力です。 【重要】導入の際は、必ず専門家に相談を 今回ご紹介した「出張旅費規程」や「所得分散」は、手元に資金を残す効果的な手法ですが、自己判断での導入は非常に危険です。 これらは税務調査において厳しくチェックされやすいテーマです。社会通念上の常識を超えた手当の設定、出張の業務実態が証明できないケース、家族に業務の実態がないのに給与を支払うケースなどは、税務署から否認され重いペナルティを受ける可能性があります。また、役員退職金の「適正額の算定」や、少額減価償却資産の特例の「適用要件」なども、非常に専門的な判断が求められます。導入を検討される際は、必ず顧問税理士などの専門家に相談し、税務リスクをクリアした合法かつ安全な仕組みを設計してください。 まとめ 法人の仕組みや公的な共済制度を正しく使いこなせば、無駄なお金を使わずに会社と個人の手元資金を増やすことができます。ただし、どの手法も「正しい運用」があってこその節税です。当事務所でも、税務リスクをしっかり管理したうえで、資金を残すためのルール作りをサポートしております。 節税と融資の関係、法人化のメリットなど、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

第1回 その節税、本当に正解?節税の本来の目的は「手元に資金を残すこと」
会社に利益が出ると、どうしても「税金を減らしたい」と考えがちです。しかし、誤った節税に走ると、かえって会社の首を絞めることになりかねません。 今回は、節税の本来の目的と、「お金が出ていく節税」の落とし穴について解説します。 ポイント① 利益が出ると税金を払いたくなくなる心理 事業が軌道に乗り、利益が出始めると、「こんなに税金を持っていかれるのか」と驚き、何とかして税金を減らしたいと考えるのは経営者として自然な感情です。 しかし、節税ばかりに気を取られると、会社の生存力を高め、成長を生み出すための「資金繰り(キャッシュフロー)」という、もっと重要な視点が抜け落ちてしまいます。ここで一度立ち止まって考えてみましょう。 ポイント② 節税の本来の目的は「手元に資金を残すこと」 節税の本来の目的は何でしょうか。それは税金を減らすこと自体ではなく、「手元に使える資金(キャッシュ)をできるだけ多く残すこと」です。 たとえば、1,000万円の利益が出たとします。そのまま申告すれば約300万円の税金がかかり、手元には700万円が残ります。この700万円は、次の事業拡大のための貴重な資金になります。 しかし、「300万円も税金を取られるくらいなら」と、不要な保険や車を1,000万円分購入して利益をゼロにしたらどうなるでしょうか。確かに税金はゼロになりますが、手元のお金もゼロになってしまいます。これでは、何のための節税かわかりません。 ポイント③ 「お金が出ていく節税」の落とし穴 世の中には、生命保険の加入や不要な車の購入など、さまざまな節税手法が溢れています。しかし、こうした「お金が出ていく節税」には十分な注意が必要です。具体的な数字で考えてみましょう。 たとえば、決算直前に1,000万円の利益が見込まれたとします。 税金を払う場合 約250万円(実効税率25%と仮定)の法人税等を払っても、手元には約750万円の現金が残ります。 保険等に加入する場合 1,000万円全額を損金にできる保険(※現在は極めて限定的)に加入すると税金はゼロになりますが、保険料として1,000万円が出ていくため、手元に残る現金はゼロです。 会社の経営を安定させ、不況や不測の事態を乗り越えるための最強の防具は「手元の現金」です。節税に気を取られて現金を枯渇させてしまえば、最悪の場合、利益は出ているのに支払いができず資金ショートを起こす「黒字倒産」の危機に直面してしまいます。 まとめ 「税金を払うくらいなら経費で使ってしまおう」という考え方は、会社から体力を奪います。節税ができても資金繰りが悪化してしまっては、まったく意味がありません。「税金を払ってでも手元に現金を残す」という視点を持つことが、強い会社を作る第一歩です。 お金が出ていかない賢い節税テクニック、節税と融資の関係など、引き続き実践的なテーマを今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
新着情報 お仕事のお話 ブログ -

最終回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~返済が苦しくなったら逃げるな——リスケ交渉と経営改善計画書の作り方~
全5回にわたりお届けしてきた「実践・資金調達&銀行融資ガイド」も、今回がいよいよ最終回です。これまでは「いかに融資を引き出し、事業を拡大していくか」という攻めの財務戦略をお伝えしてきました。 しかし経営において、どれだけ緻密な資金繰り表を作り、複数の金融機関と良好な関係を築いていても、予期せぬ外部環境の激変によって業績が悪化し、資金繰りが苦しくなることは起こり得ます。最終回は、会社の危機を乗り越えるための「資金繰りが悪化したときの対処法(リスケジュール)と早期相談の重要性」について解説します。 ポイント① 資金ショートの危機に陥ったときのNG行動3つ 売上が急減し、数か月先に「現金が底をつく」ことが予測されたとします。このピンチにおいて、経営者が陥りがちなNG行動があります。 NG① 高金利の借入に手を出す 銀行からの追加融資が断られると、焦りから審査の甘いノンバンク等の高金利な借入に手を出してしまうケースがあります。しかし一時しのぎに過ぎず、利息が雪だるま式に膨らみ、会社の寿命を縮めるだけです。 NG② 粉飾決算で取り繕う 赤字を黒字に見せかける「粉飾」に手を染めると、翌年以降も辻褄を合わせるためにさらに大きな嘘を重ねることになり、最終的には破綻という結末を迎えます。発覚すれば銀行からの信用は完全に失われます。 NG③ 銀行から逃げる(隠す) 銀行が最も嫌うのは、業績が悪化したことそのものよりも「経営状態が隠され、ブラックボックス化すること」です。手遅れになってから発覚するより、傷が浅いうちに真実を伝える方が、銀行ははるかに柔軟に対応してくれます。 資金繰りに窮したときに経営者がすべきことはただ一つ、「一刻も早く、メインバンクに現状をありのままに報告し、相談すること」です。 ポイント② 究極の資金繰り対策「リスケ(条件変更)」の効果 銀行へ早期相談に行き、何を求めるのか。それが「リスケジュール(略してリスケ:返済条件の変更)」です。リスケとは、毎月の約定返済額を一定期間(たとえば半年〜1年程度)大幅に減額してもらったり、元金返済をストップして「利息の支払いのみ」にしてもらう交渉のことです。 たとえば毎月100万円の元本を返済している企業が、リスケによって返済額を月0円(利息のみ)に減らすことができれば、毎月100万円の現金が会社に留保されることになります。これは実質的に「毎月100万円の新たな融資を受けた」のと同じキャッシュフローの改善効果をもたらし、倒産を防ぐ命綱となります。 ポイント③ 銀行がリスケに応じる条件「経営改善計画書」 銀行は「お金がないので返済を減らしてください」という口頭のお願いだけでリスケを認めてくれるわけではありません。担当者が社内で稟議を通すための明確な根拠が必要です。その根拠となるのが「経営改善計画書」です。リスケを申し込む際、経営者は以下の3つの要素を論理的にまとめた計画書を作成し、銀行に提出しなければなりません。 ① リスケに至った理由(真の要因分析) なぜ業績が悪化し資金が不足したのかを客観的に分析する ② 経営改善計画の具体的内容 経費削減・不採算部門の撤退・売上回復の施策など、具体的にどうやって利益を出していくのかを示す ③ 条件変更後の返済額と増額の予定 いつまでに業績が回復し、いつから通常の返済額に戻せるのか(正常化への道筋)を明記する この計画書が「実現可能で説得力のあるもの」であれば、銀行は「倒産させて全額回収できなくなるより、返済を猶予して企業を再生させたほうがよい」と判断し、リスケに応じてくれます。 ポイント④ 複数行取引における「残高プロラタの原則」 第2回の記事で「複数の金融機関と付き合うメリット」をお伝えしました。しかし有事のリスケ交渉においては、複数の銀行から借り入れていることがハードルになる場合があります。 リスケを行う際の重要な原則は、「すべての借入先金融機関に対して、同時に、公平な条件でリスケを要請すること」です。これを「残高プロラタ(借入残高の比率に応じた按分)」と呼びます。 たとえば「メインのA銀行にはリスケをお願いするが、付き合いの浅いB信用金庫には波風を立てたくないから満額返済を続ける」といった不公平な返済は、A銀行が認めません。「他行も同じ条件で痛みを分かち合う(足並みを揃える)」ことが、金融機関同士が協調してリスケ支援を行うための大前提となります。 残高プロラタの例 A銀行の借入残高3,000万円・B信用金庫の借入残高2,000万円の場合、リスケ後の返済額をA銀行60%・B信用金庫40%の比率で按分する まとめ——ピンチのときこそ専門家を頼る 起業し事業を拡大していく道のりは平坦ではありません。しかし業績悪化という嵐に見舞われたときでも、銀行の論理を知り適切なタイミングで「リスケ」というカードを切ることができれば、会社は生き延び再び成長軌道に戻ることができます。 資金繰りに窮し精神的にも追い詰められた状況で、単独で銀行を納得させる「経営改善計画書」を作成し、複数の銀行とプロラタ交渉を行うのは容易ではありません。そのような時こそ、財務・税務の専門家をパートナーとして活用することが、会社を守るための有効な選択肢となります。 全5回の連載をお読みいただき、誠にありがとうございました。 ※本記事は掲載時点の法令・税制に基づいて作成しています。その後の改正等により、記載内容が現状と異なる場合があります。個別の融資・税務判断については、必ず顧問税理士等の専門家にご相談ください。 【参考文献】本連載の執筆にあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。 ・『税理士必携 顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック』(諸留誕 著/日本法令) ・『中小企業の「銀行交渉と資金繰り」完全マニュアル』(安田順・池田聡 著/日本実業出版社) ・『増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(田原広一 著/幻冬舎) ・『資金繰り表作成&活用マニュアル』(篠崎啓嗣・西川佳徳 著) ・『中小企業の補助金申請支援マニュアル』(小林勇治・宮崎一紀・浅野志郎・壽義英 著/同友館) ・『なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則』(日経トップリーダー 著/日経BP) ・『なぜ倒産 令和・粉飾編 破綻18社に学ぶ失敗の法則』(日経トップリーダー 著/日経BP)
お仕事のお話 ブログ -

第4回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~融資額を最大化する「協調融資」の仕組みと補助金に頼ってはいけない3つの理由~
これまでの連載では、融資を引き出すための「資金繰り表の作り方」から、「複数行取引によるプロパー融資へのステップアップ」、そして「決算報告のベストタイミングと信用格付けの高め方」についてお伝えしてきました。 第4回となる今回は、事業拡大のスピードをさらに上げるために融資額を最大化する「協調融資というスキーム」と、多くの経営者が勘違いして資金ショートの危機に陥りやすい「補助金・助成金のリアルな落とし穴」について解説します。 ポイント① 「1行単独」の限界を突破する「協調融資」スキーム 事業が大きく成長するタイミングでは、数千万円から時には億単位の追加資金が必要になることがあります。しかしこれを1つの金融機関に「単独で全額貸してほしい」と申し込むのは、審査のハードルを自ら極端に上げてしまう行為です。銀行員からすれば、1行で巨額の貸倒れリスクを背負い込む稟議書は社内で非常に通しにくいからです。 そこで有効なのが、複数の金融機関がリスクを分担して同時に融資を行う「協調融資」です。代表的なのが「日本政策金融公庫(政府系)」と「民間金融機関(信用金庫や地方銀行など)」が足並みを揃えて融資を行うスキームです。 例)総額5,000万円の調達が必要な場合 日本政策金融公庫から2,500万円 + A信用金庫から2,500万円を同時に借り入れる ポイント② 銀行員が稟議を通しやすくなる「公庫のお墨付き」 なぜ協調融資にすると、1行単独では通りにくい高額な融資がスムーズに通るのでしょうか。それは銀行の担当者が上司を説得するための強力な根拠になるからです。 協調融資の提案を受けた信用金庫の担当者は、稟議書にこう書くことができます。「本件は政府系金融機関である日本政策金融公庫も事業の将来性を評価し、同額の融資を決定(検討)しています。当庫単独で全額リスクを負う案件ではなく、公庫とリスクを分散できるため、安全性が高い融資です」——金融機関は常に貸し倒れを恐れています。「公庫が審査を通した案件である」という事実と「他行とリスクを分け合える」という安心感は、銀行員にとって強力な後押しとなります。銀行の「リスクを嫌う心理」を逆手に取った、理にかなった交渉術と言えます。 ポイント③ 協調融資を成功させる「同時並行」と「情報開示」 協調融資を成功させる最大のポイントは、複数の金融機関に対して「同時並行」でアプローチし、全く同じ事業計画書と資金繰り表を提出して説明することです。 「まずは公庫に申し込んで、OKが出たら信金に行こう」という時間差のやり方では、金融機関同士が連携できず、協調融資の枠組みとして機能しません。融資相談の初期段階から「今回は総額○○万円の資金が必要なため、公庫さんと○○信金さんで半額ずつの協調融資をお願いしたいと考えています」と明言することが重要です。最初から金融機関同士の足並みを揃えさせ、隠し事のないガラス張りの計画を提示することが、高額な融資を引き出すための実践的なアプローチです。 ポイント④ 「補助金で資金繰り」が危険な理由——3つの落とし穴 融資とは別に、国や自治体が実施している「補助金・助成金」を活用したいと考える経営者の方も多いでしょう。確かに「返済不要」のお金は魅力的ですが、補助金ありきで事業計画を立てたり、当面の資金繰りのアテにしたりするのは資金ショートを引き起こしかねない危険な考え方です。経営者が知っておくべき3つの落とし穴があります。 落とし穴① 完全後払い(精算払い)の仕組み 補助金は先にお金がもらえる仕組みではありません。先に自社でお金を払って設備投資等を行い、事業が完了して実績報告を終えた後から、その費用の一部が補填される仕組みです。補助金をもらうためには、まず「全額を自己資金、あるいは銀行からの『つなぎ融資』で立て替える」必要があります。もし補助金を見込んで投資をしたのに銀行からつなぎ融資が下りなければ、資金ショートのリスクが生じます。 落とし穴② 採択される保証はどこにもない 要件を満たせばもらいやすい助成金とは異なり、高額な補助金には厳しい「審査」があります。近年の大型補助金(事業再構築補助金やものづくり補助金など)では半数以上の企業が不採択になるケースもあります。「補助金が受かる前提」で進めているプロジェクトは、不採択になった際に経営に深刻な影響を与えかねません。 落とし穴③ 審査から入金まで膨大な時間がかかる 申請から審査・採択・事業の実施・完了報告・実際の入金まで、半年から長ければ1年以上の期間がかかります。目の前の資金繰りには間に合わないことがほとんどです。 補助金の位置づけ 採択されたらラッキーな「プラスアルファの資金」として考える 資金調達の主軸 まず銀行融資(協調融資)をベースに確実な資金繰り計画を固める 補助金を検討する際の注意点 資金ショートを防ぐための「つなぎ融資」の確保とセットで検討する まとめ 事業を大きく成長させるための資金調達は、補助金という不確実な手段に依存するのではなく、まずは「銀行融資(特に協調融資)」をベースに確実な資金繰り計画を固めることが重要です。補助金は「もし採択されたらプラスアルファ」という位置づけで検討し、つなぎ融資の確保とセットで考えることをお勧めします。協調融資を引き出すための事業計画書や資金繰り表の作成に不安がある場合は、財務・税務の専門家をパートナーとして活用することも有効な選択肢です。 資金繰りが悪化したときの対処法・リスケジュール(返済条件変更)の交渉術・早期相談の重要性など、実践的な銀行融資のノウハウについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
お仕事のお話 ブログ -

第3回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~融資は「決算申告直後」が黄金タイミング——銀行の信用格付けを上げる決算報告の鉄則~
これまでの連載では、銀行員が稟議書を書きやすくなる「資金繰り表の作り方・見せ方」と、「複数行取引によるプロパー融資へのステップアップ」についてお伝えしてきました。第3回となる今回は、融資を極めて有利に進めるための「融資を申し込むベストなタイミング」と、銀行の内部評価(信用格付け)を引き上げる「決算報告の鉄則」について、金融機関側の論理を交えながら解説します。 ポイント① 融資のベストタイミングは「お金が不要なとき」 多くの経営者がやってしまう失敗は、「手元のお金が減ってきて支払いが厳しくなりそうだから銀行に借りに行こう」と事後相談に走ることです。しかし銀行がお金を貸す側の論理は全く逆です。銀行が最もお金を貸したいのは、「業績が好調で手元資金も潤沢にあり、すぐにはお金を必要としていない会社」です。 預金者から預かった大切なお金を貸し出す金融機関として、赤字の補填や資金ショート寸前の「後ろ向きな資金需要」に対しては極めて厳しい態度をとります。融資を申し込む最もよいタイミングは「十分な利益が出ていて、資金に余裕がある(晴れている)とき」であることを押さえておいてください。 ポイント② 稟議が最も通りやすい「決算申告直後」という黄金タイミング 一年の中で最も融資の稟議が通りやすい時期があります。それが「決算申告が終わった直後」です。 銀行が企業の返済能力を審査する際、最も信頼する公的なデータが「税務署に提出した決算書(と税務申告書)」です。黒字でしっかりと税金を納めている最新の決算書を持参すれば、銀行員は自信を持って稟議書を書くことができます。さらに決算後には「法人税等の納税」や「賞与の支払い」といった明確な資金需要が発生します。「納税資金」や「賞与資金」として融資を申し込むのは銀行にとっても資金の使い道が妥当で分かりやすいため、事業拡大に向けた手元資金を厚くする絶好のチャンスとなります。 ポイント③ 「決算報告」が銀行の信用格付けを左右する 黒字の決算書ができあがった際、「税理士から銀行に郵送しておいて」と済ませてしまう経営者がいますが、これはもったいない行為です。必ず社長自らが銀行に足を運び、「決算報告」を行ってください。 現在、多くの銀行では決算書の数字をシステムに入力し、自動的に会社の「財務格付け」を算出しています。しかし、銀行の評価は数字だけで決まるわけではありません。社長自らが銀行に出向き、「なぜ今期は利益が出たのか」「来期はどうやって売上を作っていくのか」を論理的に語ることで、システムでは測れない「経営者の資質」や「経営管理体制」といった「定性評価」がプラスに加点され、最終的な信用格付けが引き上げられます。格付けが上がれば、融資枠の拡大や金利の優遇に直結します。 財務格付け(定量評価) 決算書の数字をシステムが自動算出。簡易CF・債務償還年数・自己資本比率などが主な指標 定性評価 経営者の資質・経営管理体制・業界環境・取引先の安定性など。社長が直接説明することで加点される 最終格付け 定量+定性の総合評価。格付けが高いほど融資枠の拡大・金利優遇につながる ポイント④ 「赤字決算」のときこそ逃げずに報告する では、業績が悪化し「赤字の決算」になってしまった場合はどうすればよいでしょうか。「銀行に行きづらいから、聞かれるまで黙っておこう…」と逃げるのは最悪の対応です。銀行が最も嫌うのは、業績が悪いこと以上に「経営状況が隠され、ブラックボックス化すること」だからです。 赤字のときこそ、決算確定後すぐに社長が銀行へ赴き、以下の2点を堂々と説明してください。 ① なぜ赤字になったのか 一時的な要因(設備投資・特別損失など)なのか、構造的な問題なのかを明確に説明する ② 来期どうやって黒字化するのか 具体的な数値目標と改善計画を示す 逃げずに誠実に自社の状況を報告し、改善策を語れる経営者に対して、銀行は「この社長は信頼に足る人物だ」と評価を高めます。いざという時の支援(リスケジュールなどの返済猶予)にも柔軟に応じてもらいやすくなります。 ポイント⑤ 「定期的な試算表の提出」でガラス張りの経営をアピール 決算報告が終わった後も、銀行との強固な関係を維持するために重要なのが「定期的な試算表(月次決算書)の提出」です。決算書はあくまで「過去1年間の結果」に過ぎません。毎月あるいは四半期ごとに最新の試算表や資金繰り表を自ら進んで提出し、「ガラス張りの経営」をアピールし続けることで、銀行の担当者はあなたの会社を「安心して融資できる優良顧客」として扱いやすくなります。 格付けという観点からも、定期的な情報提供は「経営管理体制が整っている」という定性評価のプラス要因として機能します。提出を続けることで、いざ追加融資が必要になった際に「また試算表を出してもらえますか?」と言われる前に、担当者がすでに状況を把握しているという理想的な関係が生まれます。 まとめ 融資は「お金がなくなってから」お願いするのではなく、「黒字のとき」「決算直後」に申し込むことが重要です。そして赤字のときであっても逃げずに社長自ら決算報告を行い、定期的に試算表を提出することで、銀行との間に強固な信頼関係(高い信用格付け)を築き上げましょう。決算報告の場に財務の専門家が同席することで、数字の根拠や今後の資金繰りについて客観的な補足説明が加わり、銀行からの評価がさらに高まる場合があります。 融資額を最大化する協調融資の仕組み・補助金・助成金との正しい付き合い方・資金繰りが悪化したときの対処法など、実践的な銀行融資のノウハウについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
お仕事のお話 ブログ -

第2回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~「1行依存」が会社を危うくする——複数の金融機関と付き合い、プロパー融資を引き出す戦略~
前回は、銀行の担当者が稟議書を書きやすくなる「資金繰り表の作り方・見せ方」について解説しました。今回は、創業期を乗り越え事業をさらに拡大していく「創業2年目以降」の経営者が知っておくべき融資戦略、「複数の金融機関と付き合うことの重要性」についてお話しします。 ポイント① 致命的リスク「1行依存」の恐ろしさ 創業時に日本政策金融公庫や地元の銀行1行から融資を受け、そのまま1つの金融機関とだけ付き合い続けている経営者は少なくありません。しかし、事業拡大期において資金繰りを1行に依存するのは危険な状態です。 会社の命運がその1行に握られてしまうため、支店長が代わって融資方針が厳しくなったり、業績が少し悪化しただけで突然資金調達の道が絶たれてしまうリスクがあります。また、1行に依存していると金利などの融資条件の交渉においても銀行間で競争原理が働かないため、銀行側の言い値を受け入れるしかなくなります。複数の金融機関と日常的に付き合い、借入先を分散させておくことが、不測の事態に備えた「盤石な財務基盤」をつくるためのリスクヘッジになります。 ポイント② 金融機関の「特徴」を理解し、自社に合ったパートナーを選ぶ 複数の金融機関を開拓するためには、それぞれの特性を理解した上で自社の規模に合った相手を選ぶことが重要です。 メガバンク 主に大企業・中堅企業をターゲットとしており、大ロットでの融資を行う傾向があります。創業間もない小規模な企業が単独で融資を引き出すにはハードルが高いのが現実です。 地方銀行 地元の県内を中心に展開し、中堅・中小企業を主な取引先としています。一定の業績や実績が求められます。 信用金庫・信用組合 地域に密着した協同組織であり、中小企業を支援するという文化・思想を持っています。小規模な企業にも小ロットの融資を行い、関係が良好なら親身に相談に乗ってくれる心強いパートナーです。 創業2年目以降の企業が新たに取引を開拓すべきは、自社の実態に寄り添ってくれる「信用金庫・信用組合」や「地方銀行」です。 ポイント③ 「保証協会付融資」から「プロパー融資」へのステップアップ 新たに民間金融機関から融資を受ける場合、最初は「信用保証協会」が保証をつける「保証協会付融資」からスタートするのが一般的です。これは万が一企業が返済できなくなった場合に保証協会が肩代わりしてくれるため、銀行側がリスクを負わずに融資できる仕組みです。 しかし、保証協会の無担保保証枠には「原則8,000万円」という上限があります。そのため、事業をさらに拡大し続けるには、保証協会を介さず銀行が自らのリスクで直接お金を貸し出す「プロパー融資」を引き出せるようになる必要があります。保証協会付融資を通じてしっかりと返済実績を積み上げ、地域金融機関からの信用を獲得していくことが、プロパー融資へとつながる重要なステップです。 ステップ1 日本政策金融公庫の創業融資で返済実績を作る ステップ2 信用金庫・地方銀行で保証協会付融資を受け、返済実績を積む ステップ3 返済実績と財務内容の改善をもとに、プロパー融資へ移行する ポイント④ 複数行取引が「稟議の突破力」を生む 複数の銀行と付き合うことは、第1回で解説した銀行員の「稟議書」を書くプロセスにおいても有効に機能します。 追加融資をお願いする際、「実はA信用金庫さんも当社の業績を評価してくれて、前向きに検討してくれていまして…」と担当者に伝えてみてください。銀行員は「優良な融資先を他行に取られるわけにはいかない」と考えます。この健全な競争原理が働くことで、担当者は上司に対して「他行に取られる前に、当行で全額融資すべきです」と、稟議を通すための強力な根拠を手に入れることができるのです。 ポイント⑤ 信用金庫との関係を深める「口座活用術」 信用金庫との信頼関係を効率的に築くための実践的なアプローチをご紹介します。日本政策金融公庫などからまとまった融資を受ける際、その振込先(着金口座)を信用金庫で新たに開設した法人口座にするという方法です。 これにより、信用金庫の担当者は自行の口座で以下の「優良な実績」を間近で確認できるようになります。 ① 資金の安定性 まとまった余裕資金が着金し、残高が安定して推移している ② 返済の確実性 公庫への返済が毎月遅れなく行われている ③ 売上の実績 事業の売上が定期的に入金されている この実績の積み重ねが、将来その信用金庫からプロパー融資を引き出す際の強力な根拠となります。単に「融資をお願いする相手」としてではなく、「自社の財務状況をリアルタイムで見てもらえるパートナー」として信用金庫と関係を築くことが、長期的な資金調達力の向上につながります。 まとめ 事業を拡大し盤石な財務基盤をつくるためには、1行依存から脱却し、地方銀行や信用金庫など「複数の金融機関」とパイプを築くことが重要です。保証協会付融資で実績を作り、最終的にはプロパー融資を引き出せる関係性を目指しましょう。どの金融機関にアプローチすべきか迷われた際は、財務・税務の専門家に相談することも有効な選択肢のひとつです。 銀行の信用を勝ち取る決算報告のタイミング・融資申請のベストタイミング・協調融資の活用法など、実践的な銀行融資のノウハウについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
お仕事のお話 ブログ -

第1回 経営者のための実践・資金調達&銀行融資ガイド ~「1行依存」が会社を危うくする——複数の金融機関と付き合い、プロパー融資を引き出す戦略~
前シリーズ「起業・会社設立ガイド」では、資金繰り表の重要性や月商の3〜6か月分の現預金確保について解説しました。今回からの新シリーズでは、そこからさらに一歩踏み込み、「銀行側の論理を理解した上で、どう交渉し、どう融資を引き出すか」という実践的なノウハウをお届けします。 第1回となる今回は、融資交渉の土台となる「資金繰り表」について、作り方・銀行への見せ方・説明の仕方まで具体的に解説します。 ポイント① 銀行員が稟議書に書く「3つの数字」を理解する 融資交渉を有利に進めるためには、まず銀行員が社内でどのように融資を通すかを理解する必要があります。担当者は支店長などの上司を説得するための「稟議書」を書きますが、その中で必ず確認される数字が主に3つあります。 ① 簡易キャッシュフロー 税引後利益+減価償却費。銀行が「年間でいくら返済できるか」を判断する最重要指標。無駄遣い節税で利益を圧縮するとここが小さくなり、融資が通りにくくなります。 ② 借入金残高÷簡易CF(債務償還年数) 現在の借入金をすべて返済するのに何年かかるかを示す指標。一般的に10年以内が目安とされます。 ③ 自己資本比率 総資産に占める純資産の割合。高いほど財務の健全性が高いと評価されます。 この3つの数字が良好であれば、担当者は自信を持って稟議書を書けます。逆に言えば、融資交渉の前にこの3つの数字を把握し、改善できるものは改善しておくことが重要です。 ポイント② 銀行に提出する資金繰り表の「必須フォーマット」 資金繰り表とは「未来のお金の出入りを月次で管理する表」です。決算書が「過去の結果」を示すのに対し、資金繰り表は「これから何が起きるか」を示します。ここで重要なのが、「ただ入出金を書く」のではなく、銀行員が読みやすいように3つの収支に分けて記載することです。 【経常収支(本業の収支)】 売上入金 -(仕入支払+人件費+家賃+税金などの諸経費) 【設備収支(投資の収支)】 設備売却などによる収入 - 設備購入による支出 【財務収支(借入と返済)】 新規借入金 - 借入金返済(元金) ここで仕入や家賃などの経費と「借入金返済」を同じ項目に混ぜてはいけません。本業の儲けを示す「経常収支」と、借入・返済を示す「財務収支」を明確に分けることで、銀行員は「この会社は本業のキャッシュでしっかり返済できているか」を一目で判断できるようになります。収支を混在させてしまうと、銀行員がわざわざ計算し直さなければならず、稟議書が書きにくくなってしまいます。 また、特に重要なのが「売掛金の回収サイト(入金までの日数)」と「買掛金の支払サイト」を正確に反映させることです。たとえば「売上は翌月末入金、仕入は当月末払い」というビジネスモデルであれば、売上が伸びるほど支払いが入金を先行する構造になります。この実態を正確に表に落とし込むことで、銀行員は「この社長は資金の流れを正確に把握している」と評価します。 ポイント③ 銀行員が「見たい数字」を前面に出す見せ方 資金繰り表を作成したら、次は「どう見せるか」が重要です。銀行員が稟議書を書く際に確認したいのは主に以下の3点です。これらが一目でわかるように表を整理することがポイントです。 資金ショートの有無 月末残高が一度もマイナスにならないことを示す。もしマイナスになる月があれば、その月の前に融資を受けることで解消できることを説明する 返済原資の裏付け 「経常収支(本業の収支)」のプラスの範囲内で「財務収支(借入の返済)」が十分に賄えている状態を示す。本業で稼いだキャッシュで返済できていることが一目でわかるように整理する 最低残高の水準 最も資金が少なくなる月でも、月商の1か月分以上の現預金が確保されていることを示す 銀行員は膨大な数の稟議書を処理しています。「探さなくてもわかる」資料を作ることが、担当者の負担を減らし、融資をスムーズに通す近道です。 ポイント④ 「増加運転資金」の融資申請は数字で説明する 事業拡大期に必要となる「増加運転資金(売上増加に伴って必要になる追加の運転資金)」の融資申請は、資金繰り表なしでは説明が困難です。銀行員が納得する説明の組み立て方は以下の通りです。 ① 現状の確認 現在の月商・売掛金残高・買掛金残高・在庫残高を示す ② 拡大後の予測 6か月後・1年後の月商予測と、それに伴って増加する売掛金・買掛金・在庫の金額を試算する ③ 必要資金の算出 ②-①の差額が「増加運転資金」として必要な融資額となることを示す ④ 返済計画 売上が予測通り伸びた場合の簡易キャッシュフローをもとに、無理のない返済スケジュールを提示する この流れで説明できれば、銀行員は「なぜいくら必要なのか」を論理的に理解でき、稟議書に落とし込みやすくなります。 まとめ 融資交渉において資金繰り表は「提出すれば良い」ものではなく、「銀行員が稟議書を書きやすいように設計された説得ツール」として機能させることが重要です。銀行側が何を確認したいのかを理解した上で、必要な数字を正確かつわかりやすく示すことが、融資をスムーズに引き出す実践的なアプローチです。 複数の金融機関との付き合い方・銀行の信用を勝ち取る決算報告のタイミング・協調融資の活用法など、実践的な銀行融資のノウハウについて、今後の記事で順次取り上げていく予定です。引き続きご覧いただけますと幸いです。
お仕事のお話 ブログ